アフターコロナで人々の流れや動きは回復したが、長引くインフレで消費者は節約志向に。外食産業は元通りはおろか、コロナ禍だった2020年に続く倒産件数となっている。13社が“危険水域”に入り、上位には広域でチェーン展開する企業もランクインした。特集『倒産危険度ランキング2024&初公開!企業を倒産させた金融機関ランキング』の#7では、外食業界の倒産危険度ランキングを公開する。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)
アフターコロナでも“外食離れ”は継続
最も打撃が大きいのは居酒屋形態
本当の地獄はこれから――。
都内の飲食店オーナーが暗い表情でこう話すのは、コロナ禍を耐え抜いた外食業界に倒産の波が押し寄せているからだ。
帝国データバンクが1月9日に発表した調査結果によると、2023年に倒産した飲食店は768件。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を大きく受けた20年の780件に次いで、2000年以降、2番目に多い倒産件数となった。
新型コロナの5類移行後も、外食産業の市場規模は戻り切っていない。リクルートの調査によると、23年11月の外食市場全体の規模は19年の同月比で81.2%。特に減少が顕著なのは居酒屋などの飲酒を主体とした業態で、19年の同月比で66.4%にとどまった。インフレによる物価上昇が続けば、今後も“外食離れ”は加速していくだろう。
なにしろ、今の外食業界は負のスパイラルにある。まず、原材料費や人件費の高騰が飲食店の利益を圧迫している。同時に、インフレの長期化で消費者の節約志向が高まっており、客離れを起こすリスクがあるため、値上げも簡単ではない。
帝国データバンクが上場している外食企業100社を対象に行った調査では、約6割が23年度に値上げを行っていなかった。
かといって、値上げをしない“痩せ我慢”を続ければ、人件費を上げることができず人手不足に陥る。結果、開店できずに売り上げがゼロになる可能性もあるのだ。
ある飲食店オーナーは「人件費を据え置くと、アルバイトが集まらない。誰かがコロナなどに感染すれば、一気に人手が足りなくなって店を閉めざるを得ない」と話す。
もちろん、値上げもせず人件費を上げれば利益は圧迫されていく。まるで袋小路のような状況だ。「消費者が価値を感じる値上げ」を実現できなければ、その袋小路からは抜け出せないだろう。
今回、外食業界で倒産危険度の危険水域に入ったのは13社。全業種で見ても、ワースト100位以内に7社がランクインしており、外食業界の苦境が明らかになった。また、ランキング上位には、共通の特徴が当てはまった。