円安と原燃料価格の高騰で、収益悪化に苦しむ紙・パルプ業界。値上げを繰り返すも、それに抵抗する需要家の動きもあり、ペーパーレス化が一層進むのは必至だ。特集『倒産危険度ランキング2024&初公開!企業を倒産させた金融機関ランキング』の#5では、業界別の倒産危険度ランキングとして紙・パルプ業界を取り上げる。8社が“危険水域”に入り、大王製紙がワースト2位にランクインした。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
注目度が高い「紙・パルプ版」倒産危険度ランキング
業界大手の大王製紙がワースト2位に、1位は?
前回の特集『倒産危険度ランキング2022』では、16業界を対象に、それぞれ倒産危険度ランキングを作成し、記事として配信した。その中で、自動車に次いで反響が大きかったのが、紙・パルプ業界の記事だった。
日本製紙や大王製紙など主要企業の業績が悪化していたことから、倒産危険度ランキングで初めて取り上げた経緯がある。ただ、産業の規模感から、そこまで高い関心が得られるとはダイヤモンド編集部も予想していなかった。
大手製紙会社の幹部は「紙・パルプ業界の人は、同業者の信用情報に対して感度が高く、内容もすごく気にしている」と打ち明ける。この業界特性は、どこから来るのか?
大前提として、紙・パルプ業界が置かれている状況は非常に厳しい。ペーパーレス化や新聞離れを背景に、国内の紙需要は減少が続いている。
しかも、事業者数が多い上、装置産業のため需要が落ちると生産設備が過剰になってしまう。売上高が減る中で固定費が重くのしかかるが、赤字を何とか回避しようと各社、操業度を維持しようとする。結果として、価格競争に陥りやすくなるのだ。
さらに紙製品は、差別化するのが難しい。また、価格が安い割に体積が大きいので輸送費の負担も重い。足元では、円安と原燃料価格の高騰によるコスト上昇も加わる。
それ故、事業の収益性が低く、他社を買収することに経済的なメリットが見いだせず、再編がなかなか進まない――。
だから皆、「自社以外のどこかが、早くつぶれてくれないか」とじっと待っている。紙・パルプ業界には、こういった構図とメンタリティがあるのだ。
そこで今回も、ダイヤモンド編集部は紙・パルプ業界の倒産危険度ランキングを作成した。その結果、8社が“危険水域”に入っていることが判明した。
このうち、業界大手の大王製紙がワースト2位にランクインした。果たして1位はどこか。次ページでは、ワースト上位企業の顔触れを見ていこう。