生命保険業界のガリバー、日本生命保険の動きが活発化している。2023年11月末に発表したニチイホールディングスの買収だけでなく、それと同時に水面下では、2社合計で約3.4兆円に上る海外生保に対する新規出資を検討。その案件の詳細に加え、日生の置かれた現状に迫る。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
2100億円のニチイ買収と同時に
合計3.4兆円の海外新規出資も検討
生命保険業界のガリバーである日本生命保険が、複数の買収案件を同時並行で進めるなど、次期中期経営計画を見据えた動きを活発化させている。
その一つが、2023年11月末に公表した、介護最大手のニチイ学館を傘下に持つニチイホールディングスの買収だ。ニチイは介護だけでなく育児や医療事務も手掛けており、金融庁の認可が前提となるが、日生にとっては本業以外での過去最大の買収案件となる。
もっとも日生とニチイの関係は古く、子育てや介護分野で業務提携したのは1999年のことで、企業主導型の保育所も協働で展開してきた。ニチイが米投資ファンドのベインキャピタルと組んで、20年8月にMBO(経営陣による自社買収)した後もニチイの森信介社長と日生首脳陣の関係は続いており、23年初頭にも会合が開かれていたという。
その会合からすぐの4月半ば、ベインからニチイ買収を持ちかけられる。保険以外の事業を本格的に取り組むべく社内で議論を進めていた日生は、買収提案が想定よりだいぶ早くなったことに驚きつつも検討に着手。「金額が高ければ買収しない」との意向を示しつつ、1次入札のおよそ3分の2となる金額を2次入札に投じた。結果、日生によるニチイの買収が決まり、最終的に約2100億円の買収価格で合意した。
では、なぜ日生はニチイの買収を決断したのか。保険以外の事業展開をもくろむ意図は何なのか。また、ニチイ買収と同時並行で進んでいた2つの極秘プロジェクト、2社合計で約3.4兆円に達する海外出資案件の中身を次ページで明らかにしよう。