保険ラボ

10月18日、日本生命保険の元営業部長が1.8億円に上る巨額な詐欺を働いたとして、懲役5年の実刑判決を受けた。実在する福利厚生制度を悪用して架空の積み立てプランを提示するだけでなく、複数の保険契約でも法律違反が発覚したが、使用者であった日本生命の対応に非難の声が上がっている。Q&A方式で解説していこう。

日本生命の福利厚生制度を悪用し
巨額な詐欺を働いた元営業部長

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Q また大手生命保険会社の金銭不祥事が話題になっています。今回は営業職員ではなく、日本生命保険の元営業部長が詐欺罪で実刑判決を受けました。

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A 神戸地方裁判所尼崎支部が10月18日、元日本生命の林泰之被告(37歳)に対して懲役5年の判決を下しました。2017年4月ごろから22年5月ごろまでに、保険の契約者や知人らに架空の高利回りの積み立て型保険商品や海外不動産の投資話などを持ちかけ、6人から合計1億8000万円をだまし取っていたようです。

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Q 懲役5年は重い判決ですね。

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A 通常、詐欺罪の場合は最大で懲役10年ですが、今回のように複数の詐欺の場合は1.5倍になるので15年となります。今回、林被告は自首していますのでその半分の7.5年。そこで被害者Aさんの代理人弁護士は懲役8年を求刑しましたが、判決は懲役5年ですから、相当悪質だと認定したといえますね。

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Q この元営業部長は最近まで日本生命に勤務していたのですよね。

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A 今から1年半ほど前、22年3月に退職するまで日本生命に在籍していました。新宿(東京都)や柏常総(千葉県)、阪神(兵庫県)などの支社で営業部長として勤務しており、その後起業するといって退職したようですね。

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Q 最初に逮捕されたのは昨年でした。

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A そうですね。最初に逮捕されたのが22年10月です。元同僚の男性に対して、「元本保証かつ、3カ月で12%のもうけを確実に出せる」とありもしない架空の投資話を持ちかけて、現金500万円を振り込ませてお金をだまし取りました。国が中小企業を支援する「IT導入補助金制度」を挙げるなどして信じ込ませたようです。

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Q 逮捕されたきっかけは何なのですか。

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A 島根県警に自首したからです。「お客さんや同僚からお金をだまし取り、返済に困って逃げ回っていましたが、親族に諭されて自首した」と話しているようです。どうも海外のカジノや競馬などギャンブルにのめりこみ、お金を使い果たしてしまったようですね。

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Q 他にも余罪があったのですね。

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A そうです。複数回逮捕されています。中でも最も被害が大きいのが、福岡県で不動産業に従事する40代のAさんで、被害額は約1億4000万円に上ります。

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Q どうやってお金をだまし取っていたのですか。

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A 自分は営業部長候補生用のパンフレットに載っており、20歳代で入社して以来、14年4月から東京・大阪等の支社の営業部長を歴任。お客さまに有利な日本生命の商品で資金運用のお手伝いしているとアピールしていたようです。

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Q Aさんと林被告が知り合ったきっかけは何だったのですか。

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A 林被告がAさんに初めて会ったのは14年ごろです。当時は新宿支社の京王烏山営業部の営業部長で、担当の営業職員に同行し、日本生命の生命保険への加入手続きを行っています。その翌年の15年には年金保険への加入を持ちかけ、その後に日本生命に実在する役員・職員向けの福利厚生団体「星友会」を騙って資産運用の勧誘を行ったようです。

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Q 現職の日本生命の管理職が、実在する福利厚生制度を利用したように見せかければ、Aさんが信頼しても無理はなさそうですね。

保険ラボ林泰之被告が被害者Aさんに示した「偽造の積み立てプラン」(左)Photo by Akio Fujita
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