2024年度の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬が軒並みマイナス改定となった。これに対し業界団体が厚生労働省に猛抗議し、波紋を呼んでいる。『後悔しない医療・介護』の#9では、訪問介護への“はしご外し”を巡る思惑を探った。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
訪問介護を“狙い撃ち”した
マイナス改定の理由
「誠に遺憾であり、訪問介護の現場従事者を代表して強く抗議します」――。
これは2月1日にホームヘルパー(訪問介護員)の職能団体である全国ホームヘルパー協議会、日本ホームヘルパー協会が連名で発表した、2024年度の介護報酬改定に対する意見書の一文である。
この2団体が激怒している理由、それは1月22日に公表された24年度介護報酬改定において全体の改定率がプラス1.59%だったにもかかわらず、訪問介護の基本報酬だけが軒並み引き下げられたからである(下図参照)。
今回の報酬改定の基本方針では、介護従事者全体の待遇改善がうたわれていた。意見書内では、人材不足と従事者の高齢化、人件費の高騰、物価高騰などにより、閉鎖や倒産する事業所が増加しており、「更なる人材不足を招くことは明らかで、このような改定は断じて許されるものではありません。このままでは、訪問介護サービスが受けられない地域が広がりかねません」と警告している。
厚生労働省は、今回一本化された介護サービス従事者の処遇改善加算で、訪問介護は他のサービスよりも高い加算率が設定されており、トータルでは今回の改定がホームヘルパーの賃上げにつながるとしている。そうであっても、訪問介護だけの基本報酬を引き下げる理由としては説得力に欠ける。
では、厚労省が訪問介護を“狙い撃ち”した真の理由は何か。