雪化粧した北アルプスが眼前に広がる
ああ、なんてぜいたくな風景

 雪化粧した山々を眺めながら歩くのも冬山ならではの楽しみだ。長野県安曇野の光城山(ひかるじょうやま)は、JR篠ノ井線田沢駅を降りてそのまま登り始めることができる初心者向けの山である。眼前には、雪をかぶった壮大な北アルプスがびょうぶのように広がる。

「里山の風情を楽しみながら光城に登ったら、山頂から北に向かって長峰山へ縦走するのがおすすめです。雪化粧した北アルプスの雄大なパノラマは、本当にぜいたくな風景です。ああ、あのツバクロ(燕岳)にも登ったなあと確認しながらのんびりと歩くのは、小さな山ならではのぜいたくですね」

 かつて川端康成は、長峰山からの景色があまりにも美しいというので、東山魁夷と井上靖を誘って見に来たという。山頂には、その時の東山魁夷の言葉を記した記念碑が立っている。圧倒的な北アルプスと眼下に広がる犀川の流れを一望できるビュースポットの冬景色をぜひ見ておきたい。

 ヨーロッパでは頂上を目指すアルピニスト(登山家)とは別に、自然豊かな山の中腹やふもとの街を滞在しながら楽しむ人々が多く、自然の中で休日を過ごす文化が根付いているという。犀川の流れるふもとの安曇野で一泊して温泉や山河の料理を楽しめる光城山・長峰山は、この豊かなヨーロピアンスタイルにぴったりである。

「山を下りたら、安曇野には名刹穂高神社があり、ゆっくりと参拝します。また、山岳写真家で、高山蝶の研究家としても知られる田淵行男さんの記念館もあり、どっしりした山の写真が楽しめます」

登山歴60年の達人が陶酔する6つの冬山、白く輝く雄大なパノラマ光城山から見る、雪化粧した北アルプス  Photo by M.N.