村山氏には同和問題を扱った著書もある。同和問題における関係団体との協力のもとで行われた市政の取り組みは功績も大きいが、一方で過度であるとか利権の温床になっているとかいう不満も広く存在し、それを公然と攻撃してきた共産党への隠れた人気の理由になっていた。ところが、村山氏が著書などでこの問題に蛮勇を振るって切り込んだことで、保守分裂というより、共産党の票をかなり奪ってきたという指摘もある。

 ところが、年末に開催した政治資金パーティーとしての勉強会に参加者がいなかったことが共産党系のメディアに報じられたため、維新など4党が村山氏の推薦を取り消した。たしかに不適切ではあるものの、これまでの前例からすれば、選挙での公認・推薦を取り消すほどの悪質性はなさそうだった。しかし、時が時だけにまずかった。

 維新の判断は、自己防衛として当然だった。だが、維新の今後を占う一大決戦だと位置づけ、人員面や資金面で早くから組織的に支援していれば、こういう事件は起きなかったと思う。

 出口調査では、それでも維新支持層の31%が村山氏に投票し、松井氏や福山氏より多かったのだから、推薦見送りはともかく、もうすこし温かい対応もあったのではという感はある。なにしろ既存大政党の支援が決まるまでの選挙準備において資金面でも法令遵守の徹底でも勇み足はありがちなのが現実だから、あまりに厳しい対応は候補者のリクルートに差し障りが出る畏れもある。

 立憲民主党は、旧民主党の議員を市長にできたのだから万々歳である。地元選出の泉健太代表にとってはお手柄で、党内での安定度は増すだろう。ただ、出口調査では、松井氏への投票は47%と半数を切り、福山氏への投票は35%、国政選挙では多くの票を得ている無党派層では、福山氏34%、松井氏27%、村山氏22%、二之湯氏16%で、喜べる数字ではない。

 一方、公明党は、創価学会会員数が漸減傾向にあるうえに、池田大作名誉会長の死去という厳しい状況での選挙だったが、92%が松井氏に投票したということで、懸念を吹き飛ばした。

 このことは、各地の地方選挙での堅調さ、八王子市での厳しい市長選挙を支えたことも相まって、一部保守系の人から「派閥解消より自公連立解消」などという声があるなかで、あらためて、小選挙区での自民党候補の得票数の20~30%が公明党の協力によるものだという現実を思い起こせるものとなった。

 いずれにせよ、当選した松井新市長が本当に京都をよくする上で、畏れるべきは共産党よりも分厚すぎる支持者かもしれないが、ぜひとも未来志向で蛮勇を発揮してほしいと思う。

(評論家 八幡和郎)