営業赤字を続けても
店舗拡大を目指した勝算

――ライザップ事業と連携できるのは大きなメリットですね。主にチョコザップへの投資によって、全社としてはしばらく営業赤字が続いてきましたが、2024年3月期第3四半期は、同事業の早期黒字化により、連結営業利益で四半期黒字を達成しました。足もとで店舗数は全国44都道府県、1300店以上まで増えています。なぜチョコザップの急速な拡大を目指したのでしょうか。

 チョコザップには、「投資に見合うリターンが期待できる」という確信があったからです。その根拠は、テストマーケティングなどで高い成功率が見込まれたことです。投資に対する入会者数や利用継続期間、そして資金回収の見込みなどを考慮した上で、事業を始めました。

 多くの人がインターネットで、「チョコザップは素晴らしいけれど、もっと自宅の近くに店舗があればすぐにでも利用したい」というクチコミをしていました。フィットネスの店舗は、それくらい自宅からの距離が重要なのです。

 チョコザップ会員の割合は、自宅から1Km圏内が60%以上、2Km圏内だと85%以上になります。商圏が非常に限られているため、複数の店舗を展開することで顧客の幅を広げることが必要です。

 たとえば、通信販売は出店場所と売り上げの関連性があまりないし、飲食店は自分にとって特別な場所であれば駅をまたいで遠方に行く人もいるでしょう。しかし、運動は日々の習慣ですから、施設利用者の通いやすさが大きく影響します。そのため、ジムはいかに自宅から近いか、どれだけ多くの店舗を生活圏に出せるかが大きなポイントです。出店への集中投資はそのために必要不可欠でした。

――新しいビジネスモデルを構築し、商圏を確立するために大きな投資をしてきたのですね。月額3000円程度で24時間使い放題という価格設定は、かなり革新的だと思います。損益のバランスはどのように考えているのでしょうか。

 これまでフィットネスジムといえば、総合型が月額1万円以上、安い24時間ジムでも月額7000円くらいの価格設定が一般的でした。ユーザーの頭の中でも、そういう価格が形成されていたと思います。そこで当社は、損益のバランスを考えるというよりも、まずは日本中の人々が「チョコザップに行かなければ損だ」と感じる価格まで下げてみようというチャレンジをしました。