バブル再来!株価を動かす重大ニュース 人事、再編、物言う株主の思惑…記者が総力取材#3Photo by Ryo Horiuchi

石油元売り業界の頂点に立つENEOSホールディングスで“減損爆弾”が大爆発寸前だ。ENEOSが1900億円もの巨費を投じて買収したジャパン・リニューアブル・エナジーが、政府公募の洋上風力発電コンペで敗退。ENEOSが期待をかけた洋上風力発電事業が“沈没”の危機にひんしているのだ。株価に逆風となる巨額減損は果たして発生するのか。特集『バブル再来!株価を動かす重大ニュース 人事、再編、物言う株主の思惑…記者が総力取材』(全18回)の#3では、ENEOSの命運を握る重大なイベントである洋上風力発電コンペ第2弾の構図を紹介するとともに、コンペの勝敗予想も公開する。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

JREが長崎県沖でまさかの敗退
ENEOS“減損爆弾”に着火

 2023年12月に選定結果が公表された政府公募の洋上風力発電プロジェクトコンペ「第2ラウンド」では、国内最大の発電事業者であるJERA、ドイツのエネルギー大手のRWE、住友商事の3陣営が勝利を収めた。

「日本の洋上風力発電コンペにおいて、先行事業者はことごとく負ける。それにしても、ENEOSは大丈夫なのか」。第2ラウンドの結果を見て、あるエネルギー業界関係者は、そうつぶやいた。

 ENEOSとは、石油元売り最大手のENEOSホールディングス(HD)のことを指している。前述のエネルギー業界関係者が、洋上風力発電コンペ第2ラウンドの結果に絡んでENEOSHDを懸念するのには理由があった。

 第2ラウンドの対象エリアの一つ、長崎県西海市沖で、圧倒的な先行事業者として優勢が伝えられていた再生可能エネルギー専業大手のジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)陣営が、住友商事陣営にまさかの逆転勝利を許したのだ。

 ENEOSHDは22年1月、そのJREを約1900億円もの巨費を投じて買収している。買収額からJREの純資産を引いた「のれん代」は1500億円を超え、エネルギー業界関係者の間では「正当化できないほどの買収額」などと驚きの声が相次いだ。

 ENEOSHDはJREの巨額買収に当たり、「パイプライン」と呼ばれるJREが開発中のプロジェクトを企業価値に織り込んでいる。JREが敗退した長崎県沖の洋上風力発電プロジェクトもパイプラインの一つで、大きな企業価値を占めていたとされる。

 つまり、JREが長崎県沖の洋上風力発電プロジェクトで敗退し、キャッシュを生み出す可能性が消えたことで、ENEOSHDが抱えるのれん代の“減損爆弾”に着火したといえる。巨額減損に踏み切ることがあれば、ENEOSHDの株価にとって強いネガティブ要因となる。

 そしてもう一つ、ENEOSHDが抱える減損爆弾の行く末を決める一大イベントがある。JREが東北電力、ENEOSと組んで参戦する秋田県八峰町・能代市沖(以下、秋田県北部沖)コンペの選定結果が、3月にも公表される予定だ。

 秋田県北部沖のプロジェクトは長崎県沖と同様に、JREが圧倒的な先行事業者であり、ENEOSHDがJRE買収に当たって大きな価値をはじいたパイプラインの一つだ。ここでJREが2連敗となれば、ENEOSHDの減損爆弾は大爆発必至なのである。

 果たして、JRE陣営は2連敗を喫してしまうのだろうか。次ページでは、業界関係者への徹底取材に基づき、JRE陣営参戦の秋田県北部沖プロジェクトの参戦事業者を紹介するほか、勝敗予想を実名入りで大公開する。JREは強力なライバルを相手に勝ち切り、ENEOSHDが抱える減損爆弾を止めることができるのか。