洋上風力発電Photo:xu wu/gettyimages

政府公募の洋上風力発電プロジェクトコンペ「第2ラウンド」の選定結果が公表され、長崎県沖のプロジェクトでは住友商事、東京電力リニューアブルパワー陣営が先行事業者のENEOS系再エネ会社に「大逆転勝利」を果たした。連載『決戦!洋上風力第2ラウンド』では、住友商事陣営が逆転に向けて繰り出した「捨て身の術」の正体を解き明かす。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

圧倒的先行事業者のJRE敗退は
第2ラウンド最大のサプライズ

 政府公募の洋上風力発電プロジェクトコンペ「第2ラウンド」において、長崎県西海市沖(以下、長崎県沖)のプロジェクトは、先行事業者である再生可能エネルギー専業大手のジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)が圧倒的に有利とされていた。

 JREは、2017年12月に事業化へ向けた環境影響評価(環境アセスメント)に着手して以降、地元の利害関係者に食い込んできた。その後、独再エネ大手のwpd(現Skyborn Renewables)がJRE陣営に加わり、欧州流のノウハウを吸収しつつ事業を進めてきた。

 そしてJREは22年1月、石油元売り最大手のENEOSホールディングスによって約1900億円もの巨額が投じられて買収された。ビッグネームの大きな後ろ盾もあり、JREは第2ラウンドでの勝利に向けて着々と準備を進めてきた。

 ところが、である。ふたを開けてみれば、後発組の住友商事、東京電力リニューアブルパワー(RP)陣営に「大逆転勝利」を許したのだ。第2ラウンドでの最大のサプライズといえる。

『JERA、住友商事、三井物産陣営が勝利!洋上風力第2ラウンド「参戦9陣営」の全実名を公開』でも触れたように、住友商事陣営の勝因は、価格競争力だった。

 住友商事陣営は、価格の評価項目で120点満点を獲得。JRE陣営に30点近い差を付け、事業実現性で120点満点を得たJRE陣営の猛追を振り切った。

 住友商事陣営が価格競争力を発揮した要因の一つは、洋上風力で生み出した電力を高く買い取る需要家「オフテイカー」を確保したことである。住友商事は長崎県沖のプロジェクトで生み出した電力を住友金属鉱山や、半導体用シリコンウェーハの大手メーカーSUMCOなどに供給すると発表している。

 実のところ、住友商事陣営の「大逆転勝利」のカラクリは、オフテイカーをつかまえたことによる「価格破壊」だけではなかった。「捨て身の術」を繰り出し、のるかそるかの大ばくちに出ていたのだ。

 次ページでは、住友商事陣営が繰り出した「捨て身の術」の中身をつまびらかにする。それは、政府の前提条件をも覆す衝撃の大作戦だった。