ソリューション販売事業の狙いは
JR西日本グループの変革促進

 他業界での採用例としては、車両の屋根上機器を検査するために開発した「画像解析AIモデル」が注目を集めているようだ。東洋紡が導入した「AI検品ソリューション」は、目視検査数を90%削減、年間約1000時間の作業時間削減を実現した。

駅監視カメラAIによる人物・物体検知駅監視カメラAIによる人物・物体検知(JR西日本提供)

 また意外なところでは昨年開業したプロ野球日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」にも関わっている。同球場の売りである可動式屋根の開閉時に安全を確保するため、監視カメラの人物・物体検知を応用した「エリア立ち入り検知」システムとして採用されたのである。そのため、営業エリア外であるにもかかわらず、同球場にはJR西日本の広告があるそうだ(是非、探してみてほしい)。

 このように早くも各分野、各業界に進出するソリューション販売については、事業である以上、一定の売り上げ目標は設定されている。だが、本質的な目標は「技術ビジョン」が示す通り、JR西日本グループの変革を促すことにある。

 ソリューション営業企画部で顧客の課題を探り、社内の「手札」と照らし合わせ、実装につなげていく経験を通じて、事務系、技術系部門、グループ会社から集まった担当者が横断的な視点を養い、出身母体の自前主義、縦割り主義を変えていく。そうして、少しずつ社内を変えていく地道な取り組みである。

 さらに言えば、ともに課題解決に取り組んだ経験は、ソリューションを導入した顧客にも還元される。JR西日本が生まれ変わると同時に、苦境に立たされている中小鉄道事業者をはじめ新たな時代に対応しなければならない鉄道業界にとって大きな転機になることを期待したい。