顧客ニーズに合わせた
カスタマイズに強み
そんな外販であるが、さまざまに取り揃えたメニューを束ねて売り込むだけでは意味がない。なぜなら、そもそも「顧客は何が課題なのか分かっていない」こともしばしばだからだ。何を解決すればよいのか理解せずに解決策を選んでも仕方がない。
JR西日本のソリューション外販は、技術をそのままに売り込む「代理店」でも、課題を探る「コンサル」でもない。顧客と話し合いを重ねながら課題を見つけ出し、必要なソリューションを提案。導入にあたっては顧客のニーズにあわせたカスタマイズをしながら実装していく、一気通貫の「課題解決力」と「伴走力」が唯一無二の強みとなる。
コストと実績にも強みがある。新たなソリューションの開発コストを中小事業者が単独で負担するのは困難だが、JR西日本の商品は、自社のデータサイエンティストや各分野を網羅するグループ会社が開発したものだから、新たな開発コストは不要だ。
また提案は机上の空論で終わらない。鉄道やホテルなどの関連事業、グループ会社といったフィールドで積み重ねたノウハウに加え、実地での実証実験も容易だ。内製化されたデータソリューション分野では1000件以上の営業を行ったというから自信のほどが分かるだろう。
ソリューション販売のメニューは多岐にわたる。全体では100件以上、売り込みの際は30~40件もの商品を携えていくそうだ。
小さなものでは、車両と接触した動物を直接触れずに回収できる「獣キャッチャー」や、運転台の乗務員用扇風機で用いられている樹脂製の羽根が生産終了し、劣化しても代替品がない悩みを解決するためのアルミ製の羽根といった、かゆい所に手が届くものもある。
また、ありそうでなかったものとしては、接近警報機や遮断機のない「第4種踏切」向けに、横断者が手動でバーを操作することで注意喚起を促す「踏切ゲート-Lite」があり、ローカル鉄道の注目を集めているという。
大きなものでは、限られた予算の中で車両更新に悩む中小鉄道事業者向けに、大手事業者の退役車両を改造、整備の上、譲渡するマッチング事業。襖(ふすま)のように動き、あらゆるドア位置に対応する「マルチタイプフルスクリーンホームドア」。あるいは、これまで3時間半かけていた作業をロボットが3時間で行い、人間の作業時間を10分に短縮する「清掃ロボット」の導入支援もある。