米連邦準備制度理事会(FRB)のクリストファー・ウォラー理事(64)は2年前、斬新な経済的枠組みを発表した。従来とは異なり、失業率を上昇させることなくインフレ率を目標の2%に戻すことができる方法を示したため、経済界の重鎮から激しい批判を浴びた。
それから2年後、インフレ率は徐々に2%に近づき、失業率は半世紀ぶりの低水準近辺にとどまっている。ウォラー氏には先見の明があるようだ。経済学者からセントラルバンカーに転身した同氏が、FRB高官の中でも特に高い注目を集め、将来の議長候補として名が挙がるのは、そうした先見性が一因である。
近年のウォラー氏はタカ派であり、金利設定においては失業率の高さよりもインフレ率の高さを警戒している。その理由の一つは、ある枠組みにある。同氏はそれにより、標準的な経済理論に反して、失業率を高めずにインフレ率を押し下げられるという確信を得た。