スタジオ写真はイメージです Photo:PIXTA

新規のビジネスを立ち上げようと考えるとき、最も重要なことはなにか。視聴者を忘れた、スポンサーありきの番組作りが蔓延する光景を目にし続けたテレビマンが、自戒を込めて語った。※本稿は、最後まで読むとその意味がわかる、従来のビジネス書の枠にとらわれない驚きの内容が話題の上出遼平『ありえない仕事術 正しい“正義”の使い方』(徳間書店)の一部を抜粋・編集したものです。

その仕事は誰のためなのか
テレビ局の「営業枠」で考える

 あなたが今向き合っている仕事は結局、一体誰のための、何のためのものなのか。その仕事を通して、あなたは世界にどうなってほしいと願っているのか。あまりにもお利口そうな問いかけで興醒めするかもしれません。しかし、この命題が重要だということは、実のところ至極当たり前の事実なのです。

 一つ、卑近な例を挙げましょう。テレビ局の話です。

 テレビ番組の成り立ちにはいくつかのパターンがあります。局によって状況は違いますが、概ね以下の通りです。

 一つは最も一般的なルートで、「編成枠」と呼ばれます。まず番組を制作する制作部の社員や外部のディレクター、放送作家などが知恵を絞って企画を考える。この企画書が、番組のラインナップを決める編成部の社員たちによって篩にかけられ、空いた枠を埋める次の番組が決定される。

 放送する番組が決定されれば、制作部が番組制作を始め、同時に営業部がスポンサーとなる企業を集め始める。番組が完成し、放送する段では既にスポンサー企業が決定し、制作予算と会社の利益分が確保されているというのが基本的な流れです(今はこれさえ難しくなりつつありますが)。

 そしてもう一つ、「営業枠」というパターンがあります。これは番組立案の出発点が「編成枠」と異なります。「営業枠」では枠やアイディアに先立って、「番組にお金を出したい」というスポンサー企業が存在します。営業部はスポンサー企業の要請を受けて、制作部にアイディアを募り、同時に編成部との折衝を経て枠を確保。制作部の人間は、スポンサー企業の意向を汲みつつ、自分たちの思う「面白い番組」を企画する。さて、お気づきの方も多いかもしれませんが、この辺りから間違いが生じ始めるのです。