競争が激しくなるにつれて、入試問題も難化していく中学受験。効率的な対策をしなければ、合格はおぼつかない。そこで、中学受験の一流講師陣に教科別の勉強法を聞いた。特集『わが子に最強の中高一貫校&塾&小学校』(全46回)の#14では、「算数」において合否を分ける「図形」「速さ」を解くコツを伝授する。(構成/ダイヤモンド編集部 大根田康介)
算数が重要視される
「五つの理由」とは?
中学入試の算数について、「しょせんは小学生の算数だから難しくないだろう」と思う方もいるでしょう。しかし、国立大学の入試問題と同レベルになることもあります。
大学入試では、方程式やベクトルなどさまざまな数学的武器を使えますが、中学入試ではそうした武器がありません。足す、引く、掛ける、割るといった基本的な四則演算、線分図や面積図を用いた戦い方になるため、受験算数はかなり難しい科目なのです。
「入試の合否は算数で左右される」といわれるほど、中学入試では算数が非常に重要視されます。その理由は大きく五つあります。
一つ目は「特殊な科目」だからです。小学校で学ぶ算数、中学入試の受験算数、そして中学校や高校、大学入試での数学の三つはまったく異なるものです。そのため、しっかり対策をしないと得点は難しいでしょう。
二つ目は「必須科目」だからです。現在は4科目入試が一般的ですが、一部地域では3科目、さらには2科目、1科目のケースもあります。どの科目数でも算数はほとんど必要です。学校側も算数の得意な生徒を望んでおり、入試でのウエートが大きいのです。
三つ目は「得点と配点が大きい」からです。4科目入試の場合は、各科目の得点が均等な学校だけでなく、例えば国語・算数が100点ずつ、理科・社会が80点ずつなど異なるケースがあります。
「配点が大きい」というのは、算数の問題は一般的に1問当たり5~7点の高得点が与えられることが多いという意味です。一方、理科や社会は、記号や単語で答える問題なら1問の配点が1~2点といった低いものも多いです。
そのため、算数で簡単な問題を落とすと、理科や社会でより多く正解しなければなりません。これが、入試で「算数が命取りになる」といわれる理由です。
四つ目は「得点の差が大きい」からです。具体的には、合格者と受験者全体の平均得点の差を指します。多くの学校で、この得点差は算数が最も大きくなります。
五つ目は「取り組みの差が出やすい」からです。中学受験の勉強を何もせずに入塾テストを受けると、国語で0点を取る子はいませんが、算数は0点を取る子が出てきます。計算問題一つ取っても、小学校の算数よりはるかに高度です。受験算数は丸腰で解ける問題はほぼありません。
次ページでは、受験算数の「七つの分野」について解説していく。その中でも、特に「図形」「速さ」の問題を速く正確に解くこつについて、具体的に図解しながら伝授する。