京セラ創業者の稲盛和夫氏が昨年8月24日に90歳で逝去し、1年がたった。「経営の神様」などと評され、その経営哲学に共感する声は今なお数多い。だが、実は稲盛氏を巡っては、いまだ知られざる逸話や意外な人脈なども存在する。それらを再発掘し、一周忌を機に改めて稲盛氏の思想や素顔に迫る新連載『シン・稲盛和夫論』の1回目では、稲盛氏が約30年前、「私の副官」と呼んで信頼を寄せてきた大田嘉仁氏(元京セラ常務秘書室長、元JAL会長補佐)に自らの哲学を書いて渡した草稿の中身を、画像と併せて初公開する。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
約30年前に稲盛氏が記した
「直筆の草稿」を初公開!
「経営の神様」稲盛和夫氏がこの世を去ってから1年がたった。京セラや第二電電(現KDDI)を創業し、経営破綻したJALを再建に導くなどの実績を残した手腕や経営哲学を評価する声は数多い。
ダイヤモンド編集部が行った「社長が選ぶ現代の名経営者」ランキングでも、2位に大差をつけて首位となるなど、現役の経営者からも尊敬を集め続けている(『社長100人が選ぶ「名経営者」ランキング【全58人】1位は経営の神様、2位は現役の大物』参照)
その影響は経済界にとどまらない。例えば、今年3月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で侍ジャパンを14年ぶりの世界一へと導いた栗山英樹氏も、以前から稲盛哲学を敬服し、WBCの直前にも書籍を通じて教えを読み込んでいたことは、拙稿(『WBC優勝の裏に「稲盛和夫の教え」、栗山監督が“直筆の手紙”に記した感謝の言葉とは?』参照)で述べた通りだ。
WBC優勝にも一役買ったであろう稲盛氏関連の書籍とは、今年1月発刊の『稲盛和夫 明日からすぐ役立つ15の言葉』(三笠書房)。著者の大田嘉仁氏(元京セラ常務秘書室長、元JAL会長補佐、現MTG会長)は稲盛氏が生前「私の副官」と呼び、京セラ秘書室長などとして約30年にわたり側近を務めた、稲盛氏の“懐刀”のような人物だ。
そんな大田氏は、これまで公にしてこなかった「稲盛氏直伝」の手書きメモの存在を明かす。約30年前に京セラで稲盛氏の秘書を務めていた際、「これが、俺が考えていることだから、参考にしてほしい」という言葉とともに稲盛氏から渡されたものだ。そのように手書きの形で考え方をまとめてもらったのは、これが最初で最後だったといい、それ以来、大切に保管して事あるごとに読み返してきたという。
「得難いものなのでずっと持ってきたが、稲盛さんがお亡くなりになり、本来は公開すべきものではないかもしれないと思いつつ、学びや教えをできるだけ多くの人に知ってもらいたいとの考えに至った」と大田氏。この手書きメモには、「振り返れば、稲盛さんらしい考え方がたくさん入っているように感じる」とも話す。
次ページでは、稲盛氏がB5用紙2枚にわたり、自らの手で書きつづった直筆の草稿を、画像とともに初公開。稲盛哲学のエッセンスを凝縮した、貴重な箴言の数々を明らかにする。