(上)パッケージは唐辛子が薬や魔よけとして門前町で売られていた由来から薬袋をモチーフにデザイン。(中)広島県安芸高田市で無農薬にこだわった柚子を生産する川根柚子協同組合とコラボした「廣島柚子胡椒」を5月に発売。(下)協力、監修という形で食品メーカーとコラボした商品開発にも参画。

 二つ目は加工プロセス。輪切りにした唐辛子を高温処理すれば簡単だが、時間と手間暇をかけたオリジナルの低温乾燥法でうま味、風味を引き出す工夫をしている。

「中国山地に位置し、標高が高い庄原市は、特に収穫期の秋は寒暖差が激しく、アミノ酸含有量が増加します」と吉岡氏。自然豊かな環境、気候も唐辛子作りに最適だという。

 現在、外部委託も含めた約70アールの土地で12~13種類、趣味と実験も兼ねると約30種類の唐辛子を栽培。自社で加工し、ハバネロより数倍辛いジョロキアやキャロライナリーパー、さらにその上を行く激辛のドラゴンズブレスなどの他、普通の辛さの一味唐辛子も展開。食品卸を通じた小売店やオンラインでの販売、飲食店や食品加工会社への販売等、販売先を広げている。

 飲食店や食品加工会社のニーズに合わせ、「独自のブレンドや商品開発やメニュー作りに向けたコンサルティングや監修も行っています」(吉岡氏)。

 広島はつけ麺や汁なし担担麺の他お好み焼き用ソースでも激辛版が人気を博し、地元グルメとの相性もいい。加えて首都圏にも市場を広げるべく、展示会にも積極的に参加。5月には安芸高田市の川根柚子協同組合とコラボした「廣島柚子胡椒」もリリースした。

生産量日本一を目指し
広島産の魅力を発信

 吉岡氏は故郷の庄原市で農家として独立起業した背景を、「過疎化が進むこの地で小規模でもビジネスとして成立する、環境負荷の少ない持続可能な農業を実現し、モデルケースとして“過疎地で農業”の魅力を発信していきたいという思いがあります」と語る。耕作放棄地が増えていく中、小さくても健全な土壌で、農業で生計を立てられるような選択肢を次世代に残していきたいという。

 今後は、食用以外の獣害対策用スプレーなどの商品開発にも取り組み、耕作地を広げ、「唐辛子生産量日本一」を実現し、広島産唐辛子のPRにつなげていきたいと語る吉岡氏。広島県の山間地から生まれる新たな唐辛子旋風に期待したい。

(「しんきん経営情報」2024年6月号掲載)

●吉岡香辛料研究所
事業内容:激辛唐辛子の栽培・加工・販売
従業員数:1人
所在地:広島県庄原市東城町川西452-1
電話:090-1186-3516
URL:https://yoshiokakoshinryo.com/