果たして「日ユ同祖論」は
事実なのか?
「日ユ同祖論」をご存じだろうか。日本人とユダヤ人は同じ祖先を持っている、という仮説のことだ。いまから約2700年前、アッシリア人に追放されたイスラエルの失われた十支族の1つが日本人の祖先であるというのが、日ユ同祖論の骨子だ。
近年のDNA研究から、日本列島には複数のルートから人類が流れ込んできた可能性が指摘されているから、その中にユダヤ系のルーツを持つ一族がいても何ら不思議はないだろう。
もしかすると「キリストの墓」は、日ユ同祖論の貴重な物証なのかもしれない。実際、日本の神社にはユダヤの文化を思わせるものが少なくない。
たとえば手水舎は、参拝前に水で心身を清める神道の習慣の表れだが、これは古代イスラエルの礼拝所が清らかな水辺に置かれたことと共通する。獅子をモチーフとする狛犬も、ライオンが棲息していない日本に根付いているのは奇妙だが、イスラエルのソロモン神殿に置かれたライオン像にルーツがあるとも言われている。
さらに、お祭りの際に担がれる神輿は、古代イスラエルの「契約の箱(神との契約の証しである十戒の石版などを収めた聖櫃)」とうりふたつ。神社の神職が身につけている白い浄衣の袖には、複数の糸をたらした房状の飾りがほどこされているが、これは3000年以上も前から続いているユダヤの僧侶の習慣と一致する。
日ユ同祖論が否定できないのであれば、さすがにキリスト自身が日本にやって来たとは言えないまでも、はるか昔に1人のヘブライ人が八戸に渡来したのは事実なのではないかと思えてくる。

新郷村に残る伝承によれば、キリストとされるその人物は、禿頭白髪に赤ら顔、そして高い鼻の持ち主であり、いつもヒダの多いオーバーのような服を着ていたことから、村人から「天狗」として扱われていたという。彼は一体、何者だったのか。
そうした謎とロマンを振りまきながら、「キリストの墓」は今日も新郷村にひっそりと佇んでいる。果たしてこれが本物なのかどうか、ぜひ直接現地のムードを体感してみてほしい。
