TCM-2を前面から見るTCM-2を前面から見る (c)JCF/東レ・カーボンマジック Shutaro MOCHIZUKI

 中野浩一JCF(日本自転車競技連盟)選手強化スーパーバイザー/トラック部会⾧によれば、「車体そのものは重いほうなので、低速ではその重さを感じると選手は証言している。それでもスピードに乗ると惰性で走っているときでさえ、選手本人がイメージしているよりもスピードが出る。つまりレベルの高い大会でその性能が発揮できる」という。

「すべての選手が使うだろう」と中野は断言するが、短距離コーチのジェイソン・ニブレットは「一部選手は乗らないかも」と言う。

 選手それぞれの体型に合わせて各部のサイズはカスタマイズされるので、本番用の自転車がまだできあがっていない選手もいるというが、「数日あれば乗りこなせる」とべトゥはあわてていない。

 従来は選手と開発陣は一切コンタクトせず、すべてべトゥを介して開発が続けられた。しかし、2023世界選手権以降は選手の感想も反映されるようになり、パリ五輪国別出場枠獲得がかかったネーションズカップでの日本勢の躍進に貢献。「速いので脚を休ませることができる。コーナリングがとても安定している」という評価を得た。

「五輪での活躍は簡単に予測できる。日本ナショナルチームのレベルは確実に向上していき、短距離種目も中長距離種目も今では世界のトップレベルと断言できる。これから五輪までの期間中に、私は選手それぞれに目指すところの修正を求めていく。五輪に出場するすべての選手に求めるのは当然のことながらメダル獲得だ」とべトゥ。

 競技の公平さをうたう五輪には厳格なルールがあり、2023年8月の世界選手権の開幕前に市販された自転車のみが競技に使用できる。だから今回も市販価格を設定して、お金を出せば誰でも購入できるようにした。それではお金を払えば入手できるのか、最後に間宮に尋ねてみた。

「日本代表選手の分を作るので精一杯」と言う間宮の言葉を解釈すると、一般からオーダーが来ることは想定していない。購入できるとしてもそれは五輪後だろう。「7月末にできて、空路でパリに飛ばすことになるはずです」(間宮)。パリ五輪は7月26日に開幕する。