ごもっともです。たしかに多くの会社のオフィスは学校ではありません。「学校未満」です。

 学校だったら、テストで一定以上の点数がとれなければ赤点になり、追試を受けさせられます。

 塾だったら、できるようになるまで繰り返し練習させられ、次のステージに進めない。

 企業でも、工場や研究・開発などの現場では、厳しいトレーニングがあたりまえです。

 ところが、ホワイトカラーのオフィスワーカーは、いったん入社してしまえば、その後は標準以下の能力に甘んじていても放置されます。「全力でやっている感」さえ演出できていれば許され、ほかの誰かにシワ寄せがいっている。

 まさしく「会社は学校じゃない、学校未満だ」。これこそ長年にわたり経営者が「オフィスでの働かせ方」に関心をもたず、ほったらかしにした大きなツケです。

 話を戻しましょう。タッチタイピングは、パソコンを使ってビジネスをする上での基本技能です。そして、練習さえすれば誰でも習得できます。特別な知識も才能も必要ありません。

 少しずつ努力して基本が確実にできるようになれば、自信がつきます。そうやってパソコンに対する苦手意識を払拭すれば、IT技術を使ったその次の時短策にも抵抗なくチャレンジできるようになります。

 それこそが、新たなビジネスに取り組む際の基礎体力になるのです。

小さな成功体験の積み重ねが
企業組織に「熱」を生みだす

「パソコンに打つ中身を考えている時間のほうが長いのだから、タッチタイピングで多少時短できたとしても、さほど意味がないのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

 ここで思い出してください。「本質的価値を訴えるより、少しずつでも実践することが大事」です。

 タッチタイピングを習得したことにより、いままで30分かかっていた書類作成の時間が、25分に短縮できたとしましょう。この事実をどうとらえるのか。

「タッチタイピングを覚えたら5分時短ができた。だったら次は、さらに工程を高速化できるかもしれない」と、自信を覚える人もいるはずです。

 このような小さな自信の積み重ねが発する「熱」こそが、組織の変化を阻む永久凍土文化を溶かす一歩となるのではないでしょうか。