いわゆる「経営企画」の発想からすると、5分間分の報酬を割り出して「タッチタイピングを身につけたことのROI(編集部注/Return On Investment:投じた費用に対してどれだけの利益を上げられたかを示す指標。投資利益率ともいう)」を計算し、「たいしたことがない」と判断するかもしれません。

 日本の企業は30年間、この「ROIに基づくコストカット」でどんどん縮退してきました。コストカットを声高に叫ぶ人が互選されて経営層を構成してきました。

 社員の「熱」を、これまではコストカットのひとことで封じ込めてきました。この暗い習慣を、まさに時短改革をきっかけに打破しませんか。

 1キロのダイエットに成功した人は、「次は3キロいけるんじゃないか」と思ってさらにはりきる。それといっしょです。オフィス組織も、小さな成功体験を積み重ねて自信をつけることで、やがて大きな改革が可能になっていきます。

 ということで、タッチタイピングのトレーニングは、誰もが取り組みやすく、そしてわかりやすい結果が出ますので、非常におすすめです。練習ソフトも多数出ており、タイムやスコアをみんなで競い合いながら楽しく習得することもできるでしょう。

「やってみたら意外と出来た」
達成感は改革の大きな一歩

 このようにゲーム感覚で人を惹きつけたり興味をかりたてたりする効果を利用する手法は「ゲーミフィケーション(gamification)」と呼ばれます。

「与えられた課題をクリアできた」という達成感の効果はバカになりません。

 やがて部署のみながタッチタイピングにハマってマスターすると、次の段階ではもう一歩高度なパソコンスキルの習得にも興味をもってチャレンジするようになります。

「パワーポイントの作成時間を短縮するショートカットは、この10個を覚えるといい」

「作業効率をアップするには、○○社のキーボードが使いやすい」

「ディスプレイは大きいほうが、ファイルをいくつも同時に開ける」

 このような会話が、社内のいたるところで聞かれるようになります。

 自転車の漕ぎ始めはペダルが重いですが、タイヤが回転し始めるとどんどん軽くなります。同じように社内の改革も、タイヤが回転し始めればどんどん加速していくものです。

 まずは最初の一歩を、誰もが取り組めるようなハードルの低い目標から始めてみて、「やってみたら意外とできた!」という成功体験をもってもらうことが大切です。