経営者が業務改革を志す際、まずは改革の意義や価値を議論したがる傾向がある。しかし、元電通社員で同社社員の労働時間を60%削減した小柳はじめ氏は、改革を進めるには議論よりも「小さな成功体験が必要」と指摘する。小柳流・時短改革メソッドに迫る。※本稿は、小柳はじめ『鬼時短:電通で「残業60%減、成果はアップ」を実現した8鉄則』(東洋経済新報社)の一部を抜粋・編集したものです。
企業改革にゴール設定は不要
深く考えないほうがうまくいく
企業における改革、とくに「時短」の取り組みについて考えるとき、「この改革は具体的にどのような意味があるのか?」「どのような意味をもたせるべきか?」というような、大上段に構えた議論をしたがる人がいます。
しかし、あえて「本質的な価値」が何なのかは突き詰めて考えないほうが、改革はうまくいくケースがほとんどです。
なぜならば、《鬼時短》とは「ちょっとやってみたら、少し前進できた」という小さな事実の積み重ねだからです。非連続な大変化ではなく、漸進していくものだからです。
大上段に「改革のゴールはこれこれである」とぶち上げようとしたり、「そもそも時短をすることに、どういう意味があるのか?」と議論し始めると、すぐに哲学論争になってしまいます。答えのない迷路に迷い込んでしまうのです。
そもそも企業の改革は「終わりなき旅」であり、時短の目標を達成できればそれで終了ではありません。
《鬼時短》はそれ自体が目的なのではなく、「時短をやってみたら、意外とできたじゃないか」「うちの会社は時短ができたのだから、他のこともできるかもしれない。新しいことに挑戦してみよう!」という、終わりなき変化の第一歩と位置づけるべきものです。
小さな成功体験を社員に経験してもらうことで、「自分たちは変化できるんだ!」という実感をもって会社が前進していく。時短改革は、そのために「やってみる」のです。