弁護士の役割はあくまで
法律の知識を調査の場に提供すること

 税務署も、わざわざ調査を長く引き伸ばしたいわけではありません。税務調査を早く終わらせ、早期に決着をつける。そのためにお互いに協力する姿勢により、不要な衝突を防ぐことができるのです。

 私たち弁護士は法律の専門家ですので、「どのようなことがあったのか」さえわかれば、それを法的に判断することができます。一方で、税務調査官は法律の専門家ではありませんので、税務調査の内容が法的にどうなのか、ということは把握していません。

書影『税務調査は弁護士に相談しなさい』『税務調査は弁護士に相談しなさい』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
眞鍋淳也 著

 まずは担当官に「当該の事案は法律的にはどう判断するべきなのか」を知ってもらうこと。それにより、初めて税務調査の場を「議論の場」とすることができるのです。税理士及び納税者と税務調査官のやり取りでは、お互いに法律の知識がないために、正しい方向へと向かうための議論ができません。

「ここは認めましょう。相手の言っていることが正しいです」、一方で「ここは違いますね。われわれの言い分を聞いてください」という交渉を成立させるためには、話し合いの核となる法律の知識が必要です。法的根拠がなく、争点がはっきりとしないやり取りでは、いくら議論をしても出口が見えない、堂々めぐりが続いてしまうことにもなりかねません。

 大人の会話、きちんとしたボールの投げ合いをするための正しい道具、すなわち法律の知識を持ち合わせているということこそが、税務調査に弁護士が立ち会うことの大きな意味の1つだと言えるでしょう。