対処相談で学んだことは
予防相談に活かすこともできる

 ですが、結局、私の意見は採用されませんでした。ミーティングで議論を重ねた結果、出てきたのは35%という数字。私は、これでは収益性が低すぎて金融機関から問題視されると思い、とりあえずは保留にし、何人かに相談することにしました。

 すると、少し解像度が上がりました。淡路島ではホテル・旅館の平均稼働率が70%だったため、50%という強気の数字を設定しても、実現可能だということがわかったのです。

 ところが、山形での平均稼働率は70%に及びません。私の言うように50%という数字で設定してしまったら、最悪の基準としては高すぎる可能性が高い。

 では何%が適切か。

 35%で本当にいいのだろうか。まだ決めきれなかったので、他の地域のホテル業界関係者に相談したところ……。

「この辺りは、40%で設定していますよ」

 新たな選択肢が出てきました。つまり、地域によってホテルの平均稼働率が異なることに、相談を重ねることではじめて気づかされたのです。

「地域によって違うのは当たり前でしょ……?」

 そう思われるかもしれませんが、当初の私は淡路島という地理的条件やマーケット特性を無視し、数字だけを切り取ってしまっていたのです。

 これはホテル業界の稼働率に限った話ではなく、さまざまなケースで起こっているのではないでしょうか。自分と異なる意見が出たときに、より多くの人に相談することで、思い込みを外すことができるのです。

 そして、この話には続きがあります。

 平均稼働率の最低水準は前提条件によって変わることを、私は相談を通じて学びました。たとえば、平均稼働率70%の実績がある淡路島で、Cパターンを45%に設定すると、金融機関の融資額に影響を与えてしまいそうです。反対に、そこまで稼働率が高くない山形でCパターンを50%に設定すると、実現可能性の低い数字で「超楽観的」な予測だと見なされてしまうでしょう。金融機関から、事業計画そのものを否定されてしまうかもしれません。