クルマのサイバーセキュリティ対策を
しなかったら大変なことになる

齋:排ガスの対応は既に済んでいます。昨年行ったのは、いわゆるサイバーセキュリティ対策です。その規制が今年の7月から始まりました。新型車はもちろん、既存の車種も、生産を続けるのであれば対応しないと売ることができなくなってしまいます。

F:今まで造っていたクルマも、そのままでは販売できなくなるという事ですか?

齋:そうです。ISO/SAE 21434という、自動車のCSMS(Cyber Security Management System)を構築するための国際標準規格です。日本だけでなく、世界中のクルマが対象です。うんと分かりやすく言うと、外からサイバー攻撃を受けた時に、クルマが自分でそれを防ぎなさいという規格です。いまのクルマは自動運転が大変な勢いで進化しています。これがジャックされてしまうと大変な事になる。

F:例えば高速道路を走行中に遠隔で急ブレーキをかけられてしまったり、エンジンを勝手に切られてしまったりしたら大事故が発生しますよね。

齋:事故どころの騒ぎじゃありません。例えばこれが首都高速で同時多発的に起きたとしたら……これはもうテロですよね。そうならないように、クルマごとにキチンとセキュリティを高めて防ぎなさいという取り決めです。これを、製品が開発されてから廃棄されるまでを通じて担保し続けられなければいけないんです。かなり大変です。

F:開発する側としては大変なのでしょうが、ユーザー側としては、あまり……というかほとんどメリットが感じられない部分ですね。

齋:そうなんです。そこなんです。お客様の理解を得られにくい。それなのに開発費用ばかりがどんどん膨れ上がっていく。

F:お金、かかりそうですね……。

齋:かかります。メチャかかります。メチャかかるけど、販売価格に転嫁しにくい部分です。「は?セキュリティ。俺は大丈夫だから」。お客様に言わせるとこうなります。要はお客様が価値を感じてくださらない。だから今回は価値を感じていただけるような仕掛けをしたんです。