孫正義が求めた「言いたい放題」

 孫氏に近づけば近づくほどに、自分が常に試されている境地に達したということだ。スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツと渡り合ってきた相手に対して、孫氏が納得する面白い提案をするということが、どれほど大変かは想像を絶するものだ。

 しかし、そんな真剣なやりとりを求め続け、やり続けてきたのが孫氏であり、ソフトバンクだ。そこには一切の忖度もない。孫氏は、SBI証券の北尾義孝氏との対談で、人間関係の極意をこう打ち明けている。

孫正義:やっぱり、いいたい放題に何でもいえる関係というのがいちばんいい。それが男らしい仲間というものだと思うんです。龍馬だって、武市半平太(瑞山)や西郷隆盛にはいいたいことをがんがんいったり、いわれたりしているわけですよね。逆に、日本的な感覚で、仲良しクラブのような、表面的なお友だちというのは、どうでしょうかね。遠慮しすぎるというのは、決して仲がいいことにはならないのではないでしょうか。

北尾義孝:孫さんは僕より6つ下なんだけど、僕が年下で素晴らしい人だと思ったのは、孫さんが初めて。お世辞抜きで、この人は天才だと思うね。

(PRESIDENT『特別対談・孫正義vs北尾吉孝 お手本なき時代、この男たちの「脱・常識」に学べ』2007年11月12日号)

 孫氏相手に萎縮してしまうというのが普通の人間なのであろうが、それではダメだ。そんな人物は孫氏とは絶対に仕事ができない。きっと、孫氏のユーモアや気配りはいいたい放題を言い合える環境づくりなのだろう。