Windowsのシステム障害、セキュリティベンダーの「やらかし」から日本企業が学ぶべきこと世界の航空業界全体で欠航した便数は5000以上にもなったようだ Photo:Kevin Carter/gettyimages

世界で航空5000便以上が欠航に
病院では麻酔が必要な処置の延期も

 7月19日の午前中から、世界的にマイクロソフトのウィンドウズのシステム不具合が報告された。マイクロソフトほどの影響は及ばなかったが、アマゾン・ドット・コムのAWSやグーグルのクラウドサービスでも問題が起きたと聞く。

 その根本的な原因は、ITプラットフォーマーが導入していたクラウドストライクのセキュリティー・ソフト、「ファルコン」の不具合だった。今回の世界同時システム障害の影響は前代未聞で、被害額は甚大になると懸念する専門家は多い。それは、実際に起きた障害を確認すると実感できる。

 マイクロソフトの推計によると、影響が及んだ端末は世界で約850万台(7月20日時点)。地域別に見ると、4割程度が米国で起きたとの報告もある。最も影響が甚大だったのは航空業界のようで、世界の航空業界全体で欠航した便数は5000以上にもなったようだ。

 米国では、デルタ航空、ユナイテッド航空、アメリカン航空の主要3社で欠航が相次いだ。欧州では、オリンピック開催を目前に控えた、仏シャルル・ド・ゴール空港で航空機の離着率や搭乗受け付けなどができなくなった。ベルリン・ブランデンブルク空港やハンブルク空港でも一時、発着が不可能になった。

 金融分野では、ロンドン証券取引所で、ニュースやデータ配信のサービスが一時停止した。資金の決済やATM利用ができなくなるケースも出た。英国のスカイニュースは一時放映ができなくなった。

 医療サービスの分野でも混乱も起きた。米国では、病院が麻酔が必要な処置を延期するケースも出たという。警察と消防の緊急通報電話番号である、“911”が使えなくなる州もあった。

 そして、国土安全保障省など政府のシステムにも影響は波及した。今回のシステム障害で、デジタル社会を支えるインフラの寸断は、経済的な損失にとどまらず人々の安心・安全にまで無視できない影響を与えることを決定付けた。