塾の経営は未来への投資
人間性を磨いて、夢を広げてもらいたい

――塾経営で課題はありますか?

 今はちゃんと塾の売り上げだけで運営もできてるし、講師たちにそれなりの報酬を支払らえています。ちなみに、僕の報酬はゼロなんです。この塾をやることで何か利益を得ようということではなくて、未来へ投資しているというか。

 昔から地球温暖化が気になっていて、色々と新しい解決策も出てきていますが、もっと画期的な方法を思いつく人が、うちの生徒さんの中から出てくるかもしれないと思ってます。それが実現できれば、僕らの子孫まで安心して暮らしていける。そんな社会をつくるための投資みたいなもんですね、塾の経営は。

 最近は企業さんからの問い合わせも増えてて、「この地域でも、新しい教室を出せませんか?」と。フランチャイズみたいなことだと思うんですが、そんなの自由にやってくださいと。別にうちの名前じゃなくてもいいんで。子どもが理想の学習環境で学べて、日本の教育レベルがどんどん底上げされれば、未来に還元できますから。

――飲食店などの副業で利益を得る芸人もいる中で、哲夫さんは直接的な利益を得たいと思わないのですか?

 いやいや、利益は別のところでちゃんと得てますよ(笑)。塾経営では利益を得てないんですが、こういう取材を受けさせてもらったり、『がんばらない教育』(扶桑社)をはじめ本も出させてもらってますから。

――なるほど。最後に、子どもたちや教育に関して伝えたいメッセージは?

 人って色んなことを知ると、将来選択できる職業の可能性も広がりますよね。それに、知れば知るほど、分からないことも増えて、人間って謙虚になっていくんですよね。ことわざで、「実るほど小首を垂れる稲穂かな」って言葉はほんまにそうでね。しっかりと学んで、人間性を磨いて、夢を広げてもらえれば、僕は満足ですね。

 実際うちの塾には色んな可能性を秘めている子がたくさんいますから。芸人になりたいっていう男の子もおってね。その子は、口を開けばエロいことしか言わん子でしたけど(笑)。その子がどうなるか、それも楽しみにしてますね。

ヤンチャな生徒を公園に呼び出して…M-1王者笑い飯・哲夫が「格安塾」でガチンコ指導に取り組む理由1974年、奈良県生まれ。関西学院大学文学部哲学科卒業。2000年に西田幸治とコンビ「笑い飯」を結成。数々の栄誉ある漫才賞を受賞し、2010年にはM-1GPで優勝。現在は、上方を代表する漫才師として精力的に活動しながら、塾経営、農業、わらじ作り、作家など、多方面で活躍を続けている。(撮影:大森泉)