創業30周年、バイク王が「出張買取」をする理由

 ここからは、バイク王&カンパニーの澤さんのインタビューをお送りする。

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):宴席で盛り上がった勢いで取材に来てしまいました。よろしくお願いします。

バイク王&カンパニー取締役常務執行役員 澤 篤史さん(以下、澤):こちらこそよろしくお願いします。

バイク王&カンパニー取締役常務執行役員 澤 篤史氏バイク王&カンパニー取締役常務執行役員 澤 篤史氏

F:ツーリングの夜の席でも申し上げましたが、どうも中古バイクというもののイメージが良くありません。安く買いたたいて高く売っているのではないか、ポンコツをつかまされるのではないか。そんな負のイメージがどうしても強い。

澤:おっしゃることはよく分かります。実際に我々がこのビジネスを始めるまで、中古バイクの買い取りは非常にグレーでした。自動車と違って、昔はそもそも「相場」というものがありませんでしたから、もう業者の言い値で売るしかない。他に買ってくれる競業もいないから、「この値段が気に入らないなら買わない」と言われてしまえばそれまでです。正しく“買いたたき”の状態でした。

F:買いたたき。なるほど。

澤:だから本当は、結構な価値がある個体でも捨てられたりした。ナンバーだけ外して、河原や空き地に放置してしまうような人も少なくありませんでした。そんな状況に目を付けて起業したのが、バイク王です。創業は1994年ですから、今年でちょうど30周年になります。

 広告を打って、お客様からお問い合わせをいただいて、お客様の元にお伺いする。「出張買取」のビジネスモデルです。なぜわざわざ「出張」を謳(うた)ったか。クルマと違ってバイクは、エンジンがかからない状態の車両がものすごく多いからです。別に壊れているわけではないのだけれど、バッテリーが上がっていたり、何年もオイルを交換していなかったり、またパンクしたままだったり、と動かない状態のままで車庫に眠っているバイクが世の中にあふれていた。

F:ありますね。いわゆる“納屋物件”。

澤:そうです、そうです。たとえ不動車でも、キチンと整備すれば良いバイクになる。それらを正しく評価して流通させれば中古車市場の活性化にもつながる。そう思って30年前に起業したわけです。

 それまでは中古車を売るとなると、販売店に持っていくのがせいぜいでした。でも彼らは中古車販売のプロではありません。買い取ったバイクを整備して部品を交換して、つまりコストをかけて店に並べて、買った値段以上で売れるかどうかも分からない。他の業者に転売できる保証もない。昔はオークション市場もそれほど活性化されていなかった。だから安く買うしかないわけです。

 で、売った方は「こんなに安いのか。やられた。買いたたかれた」と思ってしまう。オークションだけでなく、中古車の市場そのものも活性化されていませんでしたから、良い中古車が出回らなかった。

 だからユーザー側は、良いバイクを買おうとしたら新車しか選択肢がなかったのです。昔はそんな状況でした。

F:すると、中古車市場が形成され、中古車ビジネスそのものが近代化されたのはバイク王の起業がきっかけだった、ということですか?

澤:はい。そのように自負しています。