日本の中古バイクは、大量に海外へ流れている

F:買い取り専門で起業したけれども、今は販売もしているとうかがいました。買い取ったバイクを売るようになったのはいつ頃からですか?

澤:本格的に売るようになったのは2016年からですが、最初に売ったのは2005年頃です。最初は1店舗だけで細々と。様子を見ながら徐々に広げていきました。2016年には販売もいけると確信したので、それから本格的に販売店の展開を加速させました。

F:販売を始めたのはなぜですか?

澤:バイク王は、もともと買い取り専門です。我々は買い取ってオークションに出すことをホールセールと呼んでいます。そのホールセールに競業が増えて頭打ちになってきたのが一番の理由です。起業当初は「出張買取」という形態が独占状態だったのですが、競業が増えて価格が比較されるようになってきた。競争になるから当然買い取り価格はどんどん上がっていきます。仕入れが難しくなってくる。

F:中古車を売りたいユーザー側からすれば、歓迎すべき状態ですね。

澤:そうなります。買い取り価格が上がっているわけですから。

F:すると中古バイクの販売価格もうなぎのぼり状態に上がっている。

澤:それがそうでもありません。買取価格をそのまま販売価格に転嫁できていないのが現状です。というのも、いま日本の中古バイクは大量に海外に流れているからです。オークションの会場に行くと、もう外国人のバイヤーばかりが目立ちます。この円安で日本の中古バイクは大人気です。外国のバイヤー同士が競い合ってオークション価格はスルスルと上昇していく。日本人のバイヤーは指をくわえて見ている……なんてこともあるのです。すべてのバイクがそうではありませんが、一部の人気車種はこんな状況になっています。これは自動車でも同じだと思いますが。

F:中古バイクの海外流出。なるほど、そんな背景もあるのですね。バイク王で買ったバイクは、ほとんどバイク王で売っているのですか? もうオークションにはあまり出していない?

澤:いえいえ逆です。我々の店舗で売れるのは、買い取ったバイクのせいぜい2割程度。それ以外は全てオークションに流してしまいます。

 なぜ流してしまうか? それは、バイク王の店舗の販売基準を満たしていないからです。我々は「出張買取」で仕入れたバイクの中で、特に状態の良いものだけを選んで店舗で販売しています。エンジンは動くけれども、放置されていた期間が長く、中をのぞくとサビだらけ。そんなバイクは我々の店舗では絶対に売りません。あとは走行距離。走行距離が多くて市場価値が下がってしまったものも、利益が出ないので販売は難しい。

F:クルマでも過走行車両の評価は低いですものね。クルマの場合、年間1万km以上走って走行距離が5万kmを超えると「過走行」と言われるケースが多いようですが、バイクの場合は何kmが目安ですか?

澤:中古バイクは2万kmを超えると、買う人の目が急にシビアになってきます。感覚的にはクルマの5万kmがバイクの2万kmに当たるのかもしれません。