「京セラ」と「京セラ風」の決定的な違い

《また課長、係長なども、そのグループの仕事が終わるのを見届け皆と一緒に帰るのがごく普通であった。社員がそこまで頑張れたのも、目標を何としても達成しようというひたむきな気持ちで、困難を乗り越え、達成できた喜びを皆で共に味わい、仕事に生きがいを感じ、好きになれるような雰囲気がごく自然にあったからである》

(「心の京セラ二十年」)

 令和の時代になり、社会的に深夜残業などが厳しく制限されているため、現在の京セラには過去のような厳しい業務環境は残っていないだろう。しかし、社長を含めた全員で苦労を分かち合うという行為が、従業員たちの仕事への情熱を増やすという事実は変わらないのである。

 京セラ以外で稲盛氏のアメーバ経営を導入した企業の中には、社員一人ひとりが自律的に行動できず、苦労を分かち合えず、互いに認め合うことができず、アメーバ経営を途中で断念してしまう組織も多いようである。

 一部の社員が頑張るだけでは、その努力が限界に達することは避けられないだろう。そこで、社員教育を徹底(稲盛経営における「フィロソフィー」を浸透)させることで、会社全体の士気を高める必要がある。

 その結果、社員は仕事に対する情熱を持ち続け、より高い成果を上げることができる。これは、京セラが長年にわたり成功を続けている大きな要因の一つである。