住み替え・リフォーム・老人ホーム 終の住み家の選び方#9Photo:PIXTA

50~60代は、老後を見据えた住み替えの適齢期。どんなライフスタイルを理想とするかによって選択肢は多様だが、人生の後半戦だからこそ失敗は許されない。特集『終の住み家の選び方』(全21回)の#9では、住まい選びの失敗で老後生活を台無しにしないよう、明確なビジョンと共に余裕のある計画を立てるための針路を「住まいの選択チャート」で整理する。(ダイヤモンド編集部論説委員 深澤 献)

老後の暮らし方の
イメージは千差万別

 埼玉県草加市に住む岩井陽平(56歳:仮名)さんは昨年4月、役職定年を機に大手IT企業を退職した。システムエンジニアとしてプロジェクトマネジャーの経験があったおかげで、ベンチャー企業に再就職することができた。年収は減ったが、元の会社にいても役職定年になれば3割近く減っていたはずなので同じことだ。

 自分の転職と同時期に、長男が就職して家を出た。長男の誕生に合わせて購入した3LDKの一戸建てには当初から子供部屋があったが、今は物置になっている。

「23年前に買ったときは一生もののつもりで選んだのですが、“老後”という2文字が散らつき始めた今、ここを終の住み家にするかと問われると、迷いが生じます」と岩井さんは言う。

 再就職先への通勤時間は以前より長くなってしまったし、半年前くらいから、都心のマンションへの転居を妻と真剣に検討し始めたという。

 一方、静岡県の実家で1人暮らしをしている母(87歳)の異変に気付いたのも同じ頃だ。物忘れが増え、電話をしても同じ話を繰り返すことが多い。足腰が弱ってあまり外出もしないようだった。

 次ページでは、自分の住まい探しと並行して、母親の「終の住み家」探しも同時並行ですることになった岩井さんのケースに、続けてスポットを当てていく。そして、自分と親の「終の住み家」探しについて、明確なビジョンと余裕のある資金計画を立てるために、押さえておくべきポイントをフローチャートで解説する。

 老後をどこでどう過ごすかは、これまで培った人生観によって千差万別だ。

 人生の総決算を幸せに終わらせるためにも、失敗は許されない。