“良識派”歯科医4人が「これだけは言っておきたい」と隠さずに語る覆面座談会。『決定版 後悔しない「歯科治療」』(全23回)の#4では、歯科医だからこそ知る矯正、インプラント、歯周病…、それぞれの治療の裏側を明かす。駄目な治療、いずれもめ事になってもおかしくない治療とは何か。(聞き手/ダイヤモンド編集部論説委員 小栗正嗣)
インプラントのフラップレスや1回法
条件を問わず「できますよ」は駄目
S:SIN先生 地方中核都市開業医
H:Hey先生 首都圏にて矯正専門医
T:taka先生 都内複数箇所で勤務医
sp:spee先生 地方中核都市開業医(座談会をコーディネート)
――歯科治療にはさまざまな治療法・術式があります。まず、インプラントについて指摘しておきたい注意事項はありますか。
S 歯肉を切開せずに小さな穴を開けてインプラントを埋入する、「フラップレス」といわれる手術に注意してください。
これはよほど条件が良くないとできません。何でもかんでもフラップレスでやります、というのはNGだと思う。
インプラント治療には1回法と2回法の2種類があります。歯肉を切開する手術を1回行うか、2回行うかです。
患者さんからすれば手術は1回がいいとなるでしょうが、何でもかんでも1回法でやります、というのもやはりNG。症例に合わせて選択すべきものです。
――フラップレスでできるのはどういう場合ですか?
S 例えば、骨の状態がすごくいい場合です。ですが、フラップレスでいけるのは、よほどいいケースに限られますね。
インプラント治療ではコンピューターガイドがかなり浸透してきました。事前にCTで撮った画像とお口の中の画像を重ね合わせ、正確にインプラントを埋め込むことができる手術なんですが、それでも1~2ミリずれる。
ずれても問題ない骨の状態であればフラップレスでいいんですが、そうそうない。骨の幅と高さが必要で、なだらかじゃないと駄目なんですよ。
僕もフラップレスでやることは10本のうち1本あるかないか。ほとんどの場合、歯茎を切って骨の形を整えるとか骨を増やすとか、何らかの処置を必要とします。
T そもそもフラップレスって、そんなにメリットありますかね。
S やっぱり、腫れにくいし痛みも出にくい。
T でも、インプラントの術後ってそんなに腫れるイメージはない。
S 僕も腫れることはほとんどないし、痛いと言われることも少ない。
sp 骨を削っている割に痛いって言われないですね。炎症がないところにインプラントを埋め込んでいるから痛くないんでしょうね。
T 親知らずを抜くよりも全然、楽ですよね。
S 下の親知らずで痛くないってほぼないですからね。あと閉鎖創(傷の接合)というのもあるかもしれない。
コンピューターガイドによって施術時間も20分くらいで終わるんですよ。昔に比べたら楽になっていると思います。
――歯科矯正については注意すべき治療は何ですか?