1999年に破綻、清算人が管理が引き継いでいる状況

 この惨状には、この霊園ならではの事情がある。横浜市最大の墓地として1969年にオープンした横浜霊園は、バブル時代のずさんな経営がたたって1999年に破綻。以来四半世紀にわたって、清算人が管理事務所である日本墓園を引き継ぐという異常事態が続いている。

 新たな区画の販売が封じられている上、現在も定期的に管理料が振り込まれる墓は区画全体の3割程度しかない。その収入をどうにかやりくりして霊園全体をメンテナンスしている状態だ。だから、大規模な修復工事などには十分な対処が難しい。

 管理事務所に尋ねると、筆者が見かけた荒れ墓は5年前のがけ崩れによって生じたのだという。

 土砂が襲った直後は、棹石や卒塔婆、墓誌板などが倒れた墓が、あたり一帯に広がっていたそうだ。墓を管理する人と連絡が取れた区画は、修繕や移動などして整備が進められていったが、連絡が取れない墓はどうしようもない。霊園内であっても、各区画の管理人の許可なしに運営側が勝手に手を入れることは原則できない決まりだからだ。

 ただ、このままではあまりに忍びないということで、管理事務所側の判断で遺骨だけは取り出して安全な場所で管理している。それがあの光景を作ったわけだ。

荒れた墓のすぐ背後には、地層がむき出しになった急斜面が迫っていた(筆者撮影)荒れた墓のすぐ背後には、地層がむき出しになった急斜面が迫っていた(筆者撮影)
横浜霊園の遠景。ほとんどの墓や通路は整備されている状態だが、荒れ墓も散在する(筆者撮影)横浜霊園の遠景。ほとんどの墓や通路は整備されている状態だが、荒れ墓も散在する(筆者撮影)拡大画像表示