お墓との付き合い方を、改めて考えてほしい

 ただ、同じ土地に暮らしていても、故人との距離は広がる傾向にあるそうだ。

「長生きする人が増えたため、一族の墓に新たな誰かが入るまでに30~40年空くことも珍しくなくなっています。すると、引き継いだ人はまだしも、その下の世代は会ったこともないということもザラになっているわけです。だから『うちらの代で墓を片付けようか』と考える人もいます」

 そこで引き継いだ子が誰にも相談せずに墓じまいして、後から孫世代と揉めるケースも多い。「いま」の関係性が希薄といっても、独断は避けるべきだという。

「親が亡くなった後に、急にお墓に行く頻度が増える人もいます。亡くなった友人の墓前で仲間と定期的に会うようになったという人もいます。お墓にはいろいろな人が新たな関係性を生む余地があります」

 従来通りでは墓の役割が維持しづらくなっている現状を踏まえ、だからこそ、墓との向き合い方、とりわけ一般墓との向き合い方を改めて考えてほしいと大橋さんは語る。

 お墓のみとりを始めたのもそうした思いからだ。2019年からは、墓参りの思い出を綴った文章と写真を一般から広く募集する「墓デミー賞」といったイベントも有志とともに開催している。

2024年で第5回を数える「墓デミー賞」2024年で第5回を数える「墓デミー賞」

 今の日本は少子高齢化が進行し、天涯孤独となった人や、親族がいても連絡が途絶えている人も増えている。

 しかし、そうした人口の変化は、特殊合計出生率が2.07を割った1974年頃からある程度は予測可能だった。そこに目を向けず、大規模な墓地開発や生前の墓地売買などに熱狂した負の側面が、横浜霊園の荒れ墓であったように思う。

 荒れ墓を食い止めるのは、個々の管理人のスタンドプレーではなく、故人を含めた墓との関係性の見つめ直しなのかもしれない。墓参りの機会にでも考えてみるのはいかがだろう。