大規模な霊園で、カロート(墓石の下にある、遺骨を安置するスペース)がむき出しになったまま放置されている墓がある。まるで墓荒らしにあったかのようだが、なぜそんな状態で何年も手つかずにされているのか。また、管理者が不在で見捨てられた無縁墓も年々増えているという。その理由を調べていくと、日本全体を覆う“墓事情”が見えてきた。(ジャーナリスト 古田雄介)
横浜の大型霊園に、納骨スペースがむき出しになった墓が……
横浜の中心部から南に15km。三浦半島の付け根の山腹に、横浜霊園という、およそ2万5000基の墓を抱える大規模な墓地がある。そこで先日、異様なほど荒廃した墓を見かけた。
一坪に満たない1区画分のスペースに墓石が散乱し、遺骨を納めるために地下に掘られたカロートがむき出しになっている。「○○家之墓」などと刻まれた長方形の棹石(さおいし)は周囲に見当たらず、空いた隙間には何世代か分の雑草とその枯れ草が堆積しており、墓の脇に立てられた墓誌板だけが本来の姿をかろうじて留めている。
かと思えば、そのすぐ近くには棹石が横たわったまま、やはりカロートが開放されている墓もあった。区画の入り口には「○○様 ご連絡事項がありますので、管理事務所までお寄り下さい」と書かれた小さな立て札が挿してある。
いずれも何年も放置された墓荒らしの現場のようだった。遺骨がなくなっているのだから、「元墓」と表現したほうがいいのかもしれないが。