管理者不在の墓や、一般墓の墓じまいが増えている

 横浜霊園の事情はかなり特殊だが、管理者が不在で見捨てられた墓自体はもはやどこにでもある存在だ。多摩霊園や雑司ヶ谷霊園といった都内の有名な霊園でも、少し歩けば雑草が生い茂った荒れた墓が見つかる。放置された無縁墓としてはこちらが一般的な姿だ。

雑司ヶ谷霊園の無縁墓。2023年7月に筆者撮影雑司ヶ谷霊園の無縁墓。2023年7月に筆者撮影
多摩霊園の無縁墓。2023年10月に筆者撮影多摩霊園の無縁墓。2023年10月に筆者撮影

 大抵の墓は、管理者が不在になる前に閉眼供養を経て、遺骨が取り出されて空き区画に戻される。取り出された遺骨は、永代供養墓や樹木葬墓地、納骨堂に移されたり、海洋散骨されたりする。お墓の引っ越しを指す「改葬」を含めた、広義の「墓じまい」だ。

 墓を閉じるには自治体から改葬許可証を得る必要があるが、その発行数は長らく増加傾向が続いている。1997年度には年間7万件に満たなかったが、2017年度以降は10万件を超えた。特に2022年度は突出しており、前年度から3万件以上伸びて15万件の大台に乗っている。

改葬件数の推移。厚生労働省「衛生行政報告例」を基に筆者作成改葬件数の推移。厚生労働省「衛生行政報告例」を基に筆者作成 拡大画像表示