国立公園は日本全国に点在しているので、東京や京都ばかりではなく、外国人観光客がここを目指してくれれば、オーバーツーリズムも解消するし、インバウンドの恩恵が地方にも行き渡る。しかも、そこで得たカネで、国が予算を組みにくい「自然保護」「文化保護」にも力を入れられる。

 まさに観光立国と自然保護を両立させる施策なのだ。と言っても、これは日本人が考えたシステムではなく、多くの観光先進国が当たり前のようにやっていることだ。日本が遅ればせながら、「自然で稼いだカネで自然保護をする」という考えが広まってきたというだけの話である。

 ただ、このような説明をしたところで、「高級ホテル誘致」が感覚的に許せない人は多いだろう。「自然で稼ぐなどとんでもない、自然保護のカネはどこからか湧いて出てくるものだ」と信じて疑わない人もいる。あるいは、坊主憎けりゃ、ではないが自民党政権のやることなすこと気に入らないという人もいるだろう。

 おそらく場所によっては、政治情勢や選挙とからめた反対運動も起きるだろう。

 こうしてゴチャゴチャして何も決まらない間にどんどん廃屋は増えていく。「安さ」で勝負をしている限り、人口減少が進行すればするほど観光産業も廃れていく。日本の国立公園が、海外のナショナルパークのようになるのは、まだまだ遠い道のりかもしれない。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

「国立公園に高級ホテル誘致」の岸田首相を売国奴呼ばわり、日本人の“スタジオジブリ”みたいな自然観