《一部、国立公園内の既にホテルなど宿泊施設が整備されている集団施設地区や、市街地を含む普通地域に新たな宿泊施設を誘致することは否定されるものではない》(国内35カ所全ての国立公園における民間活用による魅力向上事業推進に関する意見書)

 意見書を最後まで読むと、国立公園は地域でそれぞれ特色があるので、高級ホテルを誘致することが環境破壊につながるところもあるということに懸念を示して、まずは「廃屋化した宿泊施設の撤去やリノベーション、荒廃した登山道の整備、国立公園内の自然環境の現状把握や生物多様性の保全活動等」をすべきだと主張されている。

自然を守るためのカネ
どこから捻出する?

 そう聞くと、「まったくその通りだ!まずは美しい自然を取り戻してから、ホテルなりの誘致を検討すべきだ」と賛同をされる方も多いだろう。

 が、実はこれは難しい。「美しい自然を取り戻す」のにも莫大なカネがかかるからだ。

 今回の問題で「世界では手をつかずの自然がありのまま保全されている」などと主張をされている人も多いが、それは事実と異なる。世界の主だったナショナルパークは、管理方法の違いもあるが、日本と桁違いの国家予算がつく。自然環境を守るためのレンジャーやボランティアも日本より多い。

 じゃあ、日本も諸外国並の予算をつけろと思うかもしれないが、それは難しい。社会保障の負担がこれほど重いとなると、真っ先に予算が削られるのは文化、教育、そして環境というのは容易に想像できよう。