つまり、価格を下げても消費者が次から次へとやってくるという「薄利多売」が成立したのである。それは国立公園内のホテル・宿も同じだ。バブルまでは人口も多く、ゴールデンウィークや夏休み、冬休みの繁忙期に団体客がドカっと押し寄せた。だから、1泊5000円でも経営が成り立った。

 そういう「薄利多売」のビジネスモデルが、バブル後の日本では通用しなくなってしまったので「安宿」の多くは廃屋になってしまった。つまり今、国立公園の自然環境が悪化しているのは、長くこの地で「安宿」ばかりがあふれて、「安い観光客」をターゲットにしてきたことが最大の原因なのだ。

 このような過ちを繰り返さないためにも、高級ホテルの誘致が必要だ。

「1泊100万?やっぱり日本は安いね」なんてセレブが世界中から集まれば、国立公園内にある他のホテルの価格も上がっていく。そうなると当然そこで働く地元雇用の従業員の賃金も上がる。地域経済も活性化すれば自治体も潤う。自治体は国と「協議」をして、国立公園内の施設を整備することができるので、財政に余裕が生まれた自治体は自然保護にも力を入れられるというわけだ。

 実はこのあたりの「効果」については、「国立公園に高級ホテル誘致」に意見書を出した日本自然保護協会も全否定をされているわけではない。