「『自分がやるしかない』と精神的に追い込まれてしまったのです。正社員なので会社にある両立支援の制度も利用できたと思うのですが、『あなただけが頼り』と母が一生懸命、C子さんに言い寄ってきたのです。でも私がお母さんはズルいなと思ったのは、『仕事を辞めて介護の手伝いをしてほしい』とは絶対に言わなかった。あくまで会社を辞める選択肢はC子さんにゆだねる形をとりながらも、言葉巧みに離職に仕向けたのです」

 結局、会社を辞めて実家に戻り、両親と三人で暮らすことを選んだのは、じつは2歳上の姉の存在が大きかった。姉は子どもの頃から成績が良く、何かと「できのいい姉とできない妹」と比較されて生きてきた。

 姉はIT関連企業の正社員で、すでに結婚して夫と長男の3人暮らし。実家から電車で1時間ぐらい離れたところに住んでいるので、めったに帰省しない。

 その姉が帰ってくると、母の異常な言動が出てきた。

「お姉さんが帰省して母と話をしていると『C子はダメ、役に立たない』と、C子さんの姿が見えない頃を見計らってグチをこぼしていたそうです。それを聞いたお姉さんは『C子に世話になっているのにそんなことを言ってはダメでしょう』と、母をたしなめた。今度、お姉さんが帰った後は『あの子は忙しいといって帰ってきてくれないからアテにならない』と、姉がいないところでは姉の悪口を言い、C子さんのいないところではC子さんのことを悪く言っていたのです」

 しまいには近所の親戚にも「C子は仕事も辞めて、結婚もしないで自宅に住みついてしまったので、私の年金で養っている」と吹聴していたそうだ。