おそらく最強の投資法は
「時間を味方につけること」

 しかし、長期投資にしかできないものすごく強い戦術がある。「時間を味方につける」というやつである。短期的に見て損失を被ったとしても、グッとこらえて市場に居座って投資を続ければ、10年、20年、30年後には損どころか莫大な利益に転じているであろう――というのが基本的な考え方で、「経済は成長し続けるもの」という原則を拠り所とする投資法である。

 これだとやるべきことは「株を買ったら何があっても持ち続ける」となって、とてつもなくシンプルで、投資初心者にも受け入れられやすい。何しろ何も迷う必要はなく、ただ我慢強く、クレバーに、時として盲目的に、その株を握りしめていればいいのである。

 実際に、「数百万円の含み損が出ていた銘柄が、もう見たくないから数年放置していたら、1000万近くの含み益をもたらしていた」と話している知人がいた。損が出ているポジションを正当な理由なしに放置するのは“塩漬け”と言って、リスク管理の見地からはご法度なのだが、長期投資で時間を味方につければ塩漬けが正当化されて、辻褄が合ってしまうようなこともありえる。

 漫画『バガボンド』で、主人公の宮本武蔵が強敵に負け敗走したのち、修行しながら「負けじゃねえ 勝ちへの途中」と語る有名なシーンがあるが、それと近いことができるのが長期投資である(勝利のためにやれることとして、宮本武蔵は“修行”で、長期投資では“お祈り”という違いはある)。