小売り、銀行、通信……
増えてきた「止めたい有料化」

 銀行を例にとれば、ここ数年間に、両替手数料、通帳発行費、窓口での手数料、硬貨入金整理手数料などが、次々と有料化、もしくは値上げされてきた。通帳を例にとれば、紙の通帳を発行するために銀行は、1口座あたり毎年200円の印紙税を負担しなくてはならない。その負担金額は少なくない。従来は無料で紙の通帳を発行してきたが、最近では高齢者を除いて、新規顧客は有料になった銀行が多い。

 同時にデジタル通帳を作り、インターネットを通じて取引履歴などが分かるようにし、顧客をデジタルに誘導している。デジタル化によって、通帳を持ち歩かなくても済み、いつでもどこでも残高が確認でき、顧客の利便性は増すとPRされている。

 しかし、紙の通帳が有料化されたことによって、入出金周りのサービス・レベルが向上したかというと、顧客の視点からは必ずしもそうは見えない。この有料化は、「通帳を使って欲しくない」ための有料化と考えた方が自然である。

 クレジットカード会社や携帯キャリアの紙の請求書も、通帳と同じく、有料化が進んでる。これらは、「止めたいサービス」の背中を押すための有料化と言えよう。

  他にもコロナ禍以降、企業のお客様窓口(コールセンター)が縮小されたり、有料化されている。この有料化は消費者には気づきにくいが、「0120」(フリーダイヤル:無料)を廃止して、「0570」(ナビダイヤル:固定電話からかける場合、全国どこからでも市内通話料金で利用可)に変更した企業が相当数ある。

 0120は着信者(企業など)が通話料を負担するのに対して、0570は発信者が通話料を負担する仕組みである。0570では、電話を長く待たされると、消費者の負担は大きくなる。この有料化もサービス・レベル向上のためではなく、できる限り顧客との人的コンタクトを減らし、コストを下げたいという企業の本音が見える。