また、お客様窓口を設けていても、電話をすると、録音された音声で様々な選択肢が何層にもわたって続き、目的の所に着くまで、かなりの時間がかかる。ホームページで記載されているFAQで解決しないために、やっと電話番号を探しあてても、選択肢の中に該当する項目がなく、ズルズルと無限ループに入ってしまうこともある。

 冒頭に述べたサービスのレベルを向上させる有料化を「進化させる有料化」と呼ぶなら、後者の有料化は「止めたい有料化」と呼べるだろう。(サービス料金とは呼ばないが、大病院の特別加算金も「止めたい有料化」の性格を持っている。診療所やクリニックを経ずに直接大病院に行く患者を減らそうという医療政策の中で、紹介状を持たずに直接大病院にかかると、診察料の他に、7000円以上の特別料金が加算される)。

「止めたい有料化」が
消費者の不満を呼ぶことも

 経営上は経費を減らすことができて成功かも知れないが、「止めたい有料化」は消費者の受容度を十分確認しながら進めないと、非満足(unsatisfaction:満足はしていない)どころではなく、不満(dissatisfaction)を生む可能性がある。

 ちなみに、ゆうちょ銀行では、2022年1月17日から、窓口で51枚以上の硬貨を入金すると手数料(51~100枚で550円)を取る試みを始めたが、2024年4月1日から、それを100枚まで無料に改めた。その理由として、「中期経営計画の見直しを検討する中で、お客様の負担軽減のため」と公表されているが、利用者の不満が高かったことは想像に難くない。ちなみにATMでは依然として、1枚の硬貨入金から手数料がかかる。

 日本の企業は、同質化競争が得意と言われる。特に規制の厳しい業界ではその傾向が強く、他社を上手く真似ることは得意である。どの企業も人件費・経費や物流費の高騰に悩んでいるのは確かであるが、サービス料金に関して、他社とは違う戦略を採る企業が現れることを期待したい。

(早稲田大学ビジネススクール教授 山田英夫)