子どもの数学への苦手意識は、どうすれば克服できるのか。数学者である著者が全国の小中高校への出前授業をした中で、多くの生徒に喜ばれたのが「誕生日当てクイズ」であるという。この問題は「参加できる」「興味をそそられる」「関心を持つ」といった、数学を学習する上での大事な要素がつまっているのだ。本稿は、芳沢光雄『数学の苦手が好きに変わるとき』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。
暗算能力を活かす
「誕生日当てクイズ」
誕生日当てクイズは昔からいくつもありますが、ここで紹介するものは、1990年代後半に私の暗算能力にマッチして作ったものです。
【質問】生まれた日を10倍して、それに生まれた月を加えて下さい。その結果を2倍したものに生まれた月を加えると、いくつになりますか。
生まれた月をx、生まれた日をyとすると、この質問では
(10×y+x)×2+x=3x+20y……(1)
を尋ねています。そして、以下のように考えると、質問の回答から誕生日の月と日が“素早く”見付かります。もちろん、素早く見つけるようになるためには、それなりに練習が必要で、素早く見付けることによって回答者の感激は大きくなります。
まず、答えの(1)を20で割った余りを考えます。20で割った余りとは、次々と20を引いていって、これ以上引けなくなったときの残った数です。たとえば、
87÷20=4余7
ですが、これは次のように考えることができます。
87-20=67(1回目)
67-20=47(2回目)
47-20=27(3回目)
27-20=7(4回目)
(これ以上引けなくなったときの残った数が7)
そのように、(1)を20で割った余りを考えると、20yは途中で消えるので、それは結局、3xを20で割った余りになります。この余りを調べると、次の表を得ます。
表の最下段の数字はすべて異なるので、それぞれに対応する上段の数字を見れば、xが求まるのです。そしてxが求まれば、(1)を使えばyも求まります。誕生日を当てる側の者は、上述の一連の作業を速やかに計算します。誰でも、最初のうちはゆっくりですが、徐々に早くしていけばよいでしょう。以下、2つの例を挙げましょう。