頭の回転が速くなる仕組みとは?
脳が働くのは「快感」

――社会人の勉強に関しては、1年以内に学習した経験も、今後の学ぶ意欲もないという人が4割超に上るというデータもあります。年齢を重ねて、新しいことを始めるのがおっくうになってきたという人も多いと思いますが、なぜ新しいことや学びへのハードルが上がってしまうのでしょうか。
編集部注※ベネッセ「社会人の学びに関する意識調査2024」から

 それは、普段から自分で疑問を持つ練習をしてこなかったからだと思います。疑問を持ったり、面白いと思ったりする自覚が足りていないんです。

 学生時代は教科書があって、自然と学ぶためのきっかけが与えられましたが、社会人はそうではありません。自分から疑問に思うことや、面白いと思うことを見つけなければならないのです。

 そして、そういった疑問や興味が、新しいことを学ぶ出発点になります。

 学ぶことは、脳にとって成長の源になります。新しい情報を入れることによって脳の細胞に刺激が与えられて、「脳内ネットワーク」の素地ができるんです。

 こうした興味や疑問、好奇心にひもづいた脳内ネットワークの素地ができてくると、脳はさらに情報を知りたくなる。脳が働く体験は喜びにつながるので、脳は「また同じ刺激が欲しい!」という状態になるのです。ゲームにハマることをイメージしてもらうと分かりやすいのですが、脳が働く体験って、脳にとって快感なんです。

 これを繰り返すことで、さらに脳内ネットワークの“つながり”がよくなります。よく「頭の回転が速い」といいますが、それはある特定の領域について繰り返し習得したから、その領域の脳内ネットワークが発達したということなんです。

 だから、全てのことに対して頭の回転が速い人はいないんですよ。あくまで、その領域に関しての脳内ネットワークが発達しているというだけなので、その人にとって「頭の回転が遅い」分野も必ず存在します。

かとう・としのり/脳内科医、医学博士。新潟県生まれ。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニング、脳活性助詞強調おんどく法の提唱者。小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。著書に『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)、『1万人の脳を見た名医が教えるすごい左利き』(ダイヤモンド社)など多数。
【後編】『「仕事以外できないオジサン」になってしまうのはなぜ?50歳が大きな分かれ道になるワケ』を読む