しかしながら、新規事業を考えている各部門は、その新規事業の将来予測を求める経営企画部門からリソース配分のコミットメントを得ないと、動くに動けません。となると、どういう状況が起こるかと言うと、以下の均衡のどちらかに陥ることになります。

(1)将来の予測(特にキャッシュフロー)が難しく、新規事業計画を提示できないので(あるいは、無理繰りに提示したとしても、経営企画部門が求める予測レベルをクリアできない場合も多い)、その新規事業はリソース配分を受けられず、実行できない。

(2)将来の予測を形なりにも行い、経営管理部門の要求をクリアし、かつ合理的に見える数字を作って、経営企画部門からリソース配分のコミットメントを得る。そして、新規事業をスタートさせる

 図示すると、以下のようになります。

 上図のように、この意思決定のやり方では、(1)経営企画部からのコミットメントを得て、始動する新規プロジェクトの数が極めて少なくなり、(2)新規プロジェクトが始動した場合も、提出した予測の数字通りにプロジェクトが進行することはまずない、という状況になりがちです。

「新規事業なんてやるもんじゃない」
優秀な社員ほど萎えていく理由

 その結果、まず、実際にトライするプロジェクトの数が少なくなってしまうので、ただでさえ不確実性が高く、成功する確率が低い新規事業の中で、始動する母数が減ってしまいます。自ずと、後々成功と認識されるプロジェクトの数も極めて少数になります。

 また、中期的には成功するかもしれないものの、提出した予測が短期的に実現することは稀なので、そのプロジェクトが短期的に上手く行っていると認識されるものも少なくなります。

 というわけなので、経営企画部の「予測」に根差したリソース配分基準で新規プロジェクトを選別していると、社内では「新規事業なんてトライするもんじゃない…」「新規事業は難しい!「そもそも新規事業なんてウチの会社じゃやらせてもらえないのでは」という認識が広がり、優秀な(クレバーな)社員になればなるほど、新規事業を回避するようになるでしょう。