物流大戦#2Photo by Yoshihisa Wada

雪印乳業、東急グループ、リコー、東芝。名だたる大企業から物流子会社を譲り受け、この20年で急成長を遂げた物流会社がSBSホールディングスだ。そのSBSを率いる鎌田正彦氏は今、自身の出身であるSGホールディングスにも匹敵する売り上げ規模を視野に入れる。その勝算はあるのか。特集『物流大戦』の#2は、業界の「異能の経営者」を直撃した。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

「あり得ない価格」で争奪戦が勃発
外資参戦で物流業界は「規模の戦い」に

――物流業界でM&Aが活発化しています。この動きをどう見ていますか。

 昨年、米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が旧日立物流(現ロジスティード)を買収しました。7000億円という高値で買ったわけですが、普通はこんな価格はあり得ないですね。

 実はうちも旧日立物流のデューデリジェンス(買収監査)をやったのですが、あそこは不動産がある。どうやって7000億円の収支を合わせるかというと、KKRはその不動産を2000億円で売却し、そのお金で今度はアルプス物流を買った。そうやって7000億円の旧日立物流をブラッシュアップし、1兆円なり2兆円なりの価値にして再上場するか再売却するのでしょう。

 うちはアルプス物流の入札にも参加しましたが、あれだけのプレミアムが付くと、巨額ののれんが発生する。だからわれわれのような上場物流会社は手が出せない。あれはファンドだからこそできる技だと思います。

 今、何が起きているかというと、KKRが物流会社を買ったことにより、「物流会社にこんなに不動産があるのか」と分かったわけです。ファンドの力で会社を買う。不動産の含みがあるので高値で買っても採算が合うんです。

――ファンドの資金が物流業界に入ってきたのが一つの発火点かもしれませんが、日本の大手物流会社も応札し、争奪戦になっているのはなぜだと思いますか。

 国内のパイが増えない中で、自分たちのシェアを上げたい気持ちを持っているからです。

 やはり会社は規模の利益がないと設備投資もできない。僕らもベンチャーとして創業して上場し、売上高100億円の規模ではできなかった投資が、今5000億円近い規模になってできるようになりました。設備投資力が全然違う。

 2024年問題でトラックドライバーが集まらないことも一つのきっかけになっていますが、一番大きいのは規模の利益の追求です。その規模を皆が買いにいっている。そうした規模の戦いを物流会社がし始めた。

SBSホールディングスの鎌田正彦氏は今の物流業界について「規模の戦いを物流会社がし始めた」とみる。その理由はなぜか。その中でSBSはどのような一手を打とうとしているのか。次ページで明らかにする。