この「予測」を強いている点が、色々な問題を引き起こす出発点となっています。

(a)新規事業の採択数が減る(みすみす、トライする機会を大幅に減らしている)

(b)採択された新規事業も事前の予測通りに行かない

(c)経営企画部の判断の高いハードルを超えたのだから、中期的に上手くいかなくなった場合も、撤退の判断が下せない。(また、高いハードルを超えているのだからということで最初から多額の予算が配分されがちであることも、撤退の判断が下しにくい一因となり得る)

(d)結局、ほとんどの新規事業は上手く行っているようには見えなくなる。(本稿のメインタイトルが言う状況)

(e)新規事業の提案の数自体が減っていく……

 という悪循環が回り始めてしまいます。

新規事業を成功に導くために
即刻止めなければいけないこと

 つまり、問題の発端となっている「予測」を求めることを止めればいいのではないでしょうか。

「予測を求める」というのは、もうちょっと詳しく言えば、「期待リターン(収益)を、プロジェクトが始まる前から、計算せよ」ということです。そして、当初の投資コストと比較することによって、何パーセントの収益率、よりテクニカルに言えば、内部収益率(Internal Rate of Return=IRP)の計算が求められます。そして、経営企画部の設定するIRRのハードル・レートを超えていれば、その新規プロジェクトにはGOサインを出す、というのが、この意思決定の基本ストラクチャーになります。

 この意思決定方式は、既存事業の選択と集中には機能するかもしれません。しかし、新規事業あるいは研究開発に、この意思決定方式で対処していたら、上記で説明したような、好ましくない均衡に陥るでしょう。