想像するよりポテンシャルが高い
日本のインバウンドツーリズム
日本経済の今後を考える上でインバウンドビジネスは極めて重要になる。インバウンドビジネスとは日本国内に向けられる資金、知見、人材などを含む多様な海外の資源を意味し、こうした海外資源を適切に活用することが必要になる。
筆者の専門はグローバル経営であり、多くの場合グローバル経営というとアウトバウンド(いかに海外進出するか)が主要な課題になるのだが、インバウンドビジネスもグローバル経営の一部なのである。
筆者は早稲田大学のビジネススクールにおいて、企業幹部向けの「エグゼクティブプログラム」を担当することが多く、さまざまな大手日本企業の幹部や候補生とその企業の将来戦略を議論し、世界各国への展開案を議論してきた。そこで発見したことは、人口減少と少子高齢化が進む中、日本で内需を中心に成長できる産業が極めて少ないことである。
日本経済の持続的な発展には海外の資産・資源を活用すること(インバウンドビジネス)が欠かせない。インバウンドビジネスの中でもインバウンド・ツーリズム(訪日観光)はわかりやすい成長分野であり、昨今期待と課題が混在している。本稿はインバウンドツーリズムを中心のその可能性と課題の概略を語る。
日本が現在、世界的に競争力のある分野は限られてきており、世界経済フォーラムの国家競争力調査やその他のランキングで上位に位置するものは少ない。そうした中で日本が上位に位置づけられる数少ない指標が観光であり、世界経済フォーラムが出すTravel & Tourism development Index(TTDI) では、2022年は世界1位、2024年は世界3位である。TTDI2024年版は119カ国を対象にしているが、その順位は以下のようになっている(( )はスコア)。